明けない夜

 もちろん比喩。
 隣の芝生すら枯れきる、完璧に平等な絶望は、人をいっそ穏やかにした。世界中が「穏やか」に穏やかな驚きを示し、同時に納得もした。みんな諦めていた。覆水は盆に返れなかった。
 宗教を問わず、都市も社会も佳く死ぬ方法を模索した。痛みから逃れ、苦しみから逃れ、嫉妬から逃れることが義務であり法だった。結果、人は人にやさしくなった。諦めこそが幸福だった。死を受け入れて、死を克服した。そんな気になった。
 どうせみんな死んでしまう。どんな心臓も、いつか止まる。都市も。社会も。地球も。宇宙も。止まる。なおのこと踊れる限り踊る。楽しく生きる。ちゃんと死ぬ。等間隔に打ち付ける軛に任せ、真っ暗な夜を踊り明かす。

サウンド超短編 投稿作

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