鈴木くんのモロヘイヤ
「狡いと思います」
自分の声が震えていて、内心驚いたら、まるで驚きを肯定するかのように、先生は鳩豆な顔を僕に向けた。
「彼ばかり贔屓してるって、クラスのみんなも言ってます」
嘘ではないが、クラスのせいにしている罪悪感が、僕の息を詰まらせる。
「お前も、そう思うか?」
先生の声は、しっかりと空気を震わせて僕の嫉妬心を揺らした。
「僕は・・・」
言葉を探して、探そうとして頭の中が空回る。
「うまい野菜を育てられるヤツに悪いヤツはいないなんて、下らないことを言う気はないが」
先生は、いくつか丁寧に千切ってから僕に手渡した。
「まぁ、食ってみろよ」
口に含み噛む。摘みたてな青臭さのあとに、ぬめりが残る。
なにもかも、ただ僕が食べ方を知らないだけなのかもしれない。
超短編 500文字の心臓
第128回競作「鈴木くんのモロヘイヤ」投稿作
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