プラスティックロマンス

 僕の恋は、僕が落ちてはいけない恋だったのです。
 深く暗い穴の底で毎日プレイズチックを掘る僕は、1万年前の真っ黒な地層で眠っていた彼女を起こしてしまいました。1万年前の昔、マンネクヮインと呼ばれ、己の白さと競わせるかのように色とりどりの衣装をまとったはずの彼女を。
 30年生きることさえ叶わないプレイズチック掘りと、1万年前から白く美しいマンネクヮイン。

 僕が落ちてはいけない恋だったのです。

 六本の腕で掘り、四つの瞳が恋に落ちた彼女を、僕は十二本の指でバラバラにし、一つのプレイズチックの塊にしました。
 台車に乗せられ選プル場へ運ばれゆく彼女は、どのプレイズチックよりも白く澄んでいました。
 プレイズチック掘りの僕は、その日中泣きながらプレイズチックを掘り続けました。
 今日だって、僕は深く暗い穴の底で真っ黒になりながら、プレイズチックを掘るのです。白い幻影を掘るのです。
 僕が落ちた恋は、プレイズチック掘りが落ちてはいけない恋だったのです。

超短編 500文字の心臓
第56回競作「プラスティックロマンス」参加作

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