赤いサファイア

 「エメリー」なんてチョイカワな名前の鋼玉と、意味わかんない「ルチルの針状結晶」が混ざったらスター扱いの紅玉は、構造も読みもおんなじなのに、片や研磨剤で片や宝石。同じコランダムの一種にすぎないのに。一皮むけば肉と骨的なね。
 目の前にいる詰襟やセーラ服の集団にだって、芯に鉄とかカルシウムを抱え込んで、違う色に輝くヤツがいるかもしれない。たぶん、いないけど。いてたまるか。こんな田舎の中学に。いてもわたしぐらいだ!
 なんて妄想するぐらいしか楽しみがない授業中。学校が厭なのか、こんな田舎が厭なのか、正直よくわからない。グラウンドで体育やってないし、読みかけの文庫もスマフォも家に忘れたしで、写真綺麗なんだよ。理科の資料集。単純に科学スゲェなぁとかも思う。
 こんな時間もあと一年ちょいで卒業。高校は隣町行くし。隣町も田舎だけど。隣の芝生は青い? とりあえず、早く逃げたい。

超短編 500文字の心臓
第139回競作「赤いサファイア」投稿作

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