「涙はね、いつか誰かを悲しませるの」 枕元で半べそをかいていたわたし。白く細いその腕を伸ばす祖母。 「蒸発して、雲になる。雨になって、川を流れて、涙は誰かに還るのです。そして涙は、また誰かから流れるの。だから、あなたは泣いちゃいけません」 白く細い腕でぬぐわれるたび、わたしの目からは涙が溢れた。 「仕方のない子・・・いいかい。今日を限りにするのよ」 いつの間にか祖母も泣いていた。
「涙はね―」
超短編 500文字の心臓第29回競作「水浪漫」参加作を一部修正