サッカリン主義
彼女は10分以内にリプライをくれる。
「おはよう。昨夜は遅かったから、太陽がまぶしいヨ――」
すぐに僕はリプライを書く。
「そんなことばっか言ってると、また遅刻するぞ――」
クリックすると彼女の声がメールの送信を伝える。効果音関係は全部彼女の声で、目覚まし代わりのケータイも、彼女の声で優しく起こしてくれる。もちろん、メールの受信を伝えるのも彼女の声だ。
「ふふふ。ありがとね――」
デスクトップだけじゃなく、部屋中に彼女はいて、僕は彼女の抱き枕に添い寝する。部屋着も寝間着も一張羅にも、プリントされてるのは彼女だ。
僕だけじゃない。彼女には万単位のファンがいて、彼らもメールを書く。でも、彼女のリプライは絶対に10分以上遅れない。
だって、全部自動返信だから。
二次元美少女「佐塚凛」
絵だってことも、彼女の声優に子どもがいることも、狡猾な課金システムも、全部わかってる。
でも、それがどうした?
すぐに僕はリプライを書く。
仕方ないだろ?
僕は恋したんだ。
MSGP2006エクストラマッチ
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