さかなめ日和

 風邪を引いた。
 汗掻いて追い払おうとしたけれど、なかなかうまくいかなくて、お医者さんにもかかったけれど
「普通の風邪ですね」
 普通ってなんだよ! とも言ってられず、おとなしく出された薬を飲んで寝た。寝ていたら、夢に出た。出た。出た祖父母がにんまり笑ってこう言った。
「目を喰え。眼球。きゅっきゅらきゅ」
 なんだそれ! と返す気力もなく、言われるままにフラフラ着替えて、クラクラ歩き、ユラユラと鱈のぶつ切りを魚屋に仕立ててもらったりした。買った。味噌が無かったから、それは隣の味噌屋で。古い町に住んでて良かったと心から思いながら、トツトツ煮込んで食べたあら汁は、魚の出汁が入り乱れた混沌が口の中で炸裂。目玉はとろけすぎて流れだし、白目だけがプカプカしてたから、全部掬って紐を通して念珠にした。

超短編の友 濃縮還元版」未採用作を一部修正

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