サマ化け

 最初に君と出会った社交界としてのパーティで、わたしは君を「お客様」と呼んだ。なにせ、わたしはバイトのボーイで、君はゲストだったから。
 君がこちら側の人間だと一目でわかった。不貞腐れた十代を過ぎて、分別もついて大人になった君。不器用な笑顔で、背景に馴染もうとする君。
 生き難い社会をやり過ごすために、わたしたちは時と場所と時間に応じて呼び方を変える。
 誰もいない海。幸福の向日葵。悲しいだけの旅。授かった命・・・呼び方の数だけ思い出がある。
 わたしの奥様だった君は、新たな名を得て旅立った。
 今、わたしはなんて君を呼べばいいのだろう?
 そっちへ行くまでに、神様でも仏様でもなく、今の君に相応しい呼び方を探そうと思う。
 愛しているよ。おやすみ。

超短編 500文字の心臓
第107回競作「サマ化け」参加作

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