性の起源(2)
少女が最後に泣いたのは、初めて酸素が肺に満ちた時。
よって、少女に友達はいない。
完全に閉じた、あるいは完全に開いた彼女の世界は、彼女一人によって、あるいは無によって埋め尽くされている。
だから彼女はブランコを漕いでいた。
風が頬を薙ぎ、指が鎖に巻きつかれる。
力を感じたくなって、少女は両脚に力を込めると両手を放した。
引き寄せられるまま少女は母なる大地を抱きしめ、大地は少女を抱きしめた。
このまま死んでも・・・いい。
「バカじゃねぇの」
予期せぬ邪魔者を少女は睨めた。
「あんなとこで手ぇ放したら落ちるに決まってんじゃん」
そういうと少年は少女へ手をのばした。
「膝、血ぃ出てるし」
「・・・知ってる」
少女はその少年の手を掴んだ。
生暖かく、汗ばんだ手―
少女がとても照れているのは、たぶん、その涙のせいではない。
超短編 500文字の心臓
第22回競作「性の起源」参加作
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