誰かがタマネギを炒めている ver.江戸の華

「かっ火事だ!」
「どうしたんだい。そんな大声出して」
「ご隠居。火事ですぜい。火事火事」
「一度言えばわかるよ。誰も今何時だい?なんて言いやしないよ」
「えーと、十時で。十一、十二」
「『時蕎麦』じゃないんだから。で、何処が火事なんだい?」
「後楽園ッス」
「はて。そうそう燃えそうじゃないね」
「間違えました。後楽園ホールです」
「ってぇと、なにかい?大仁田厚が電流爆破デスマッチでもやってたのかい?」
「大仁田?誰ですか?ともかく、東京ドームも燃えてるみてぇです」
「ずいぶんと大きな目玉焼きだね」
「ご隠居。今時、誰も東京ドームの愛称なんて覚えちゃいないですよ」
「電流爆破デスマッチよりビッグエッグはマイナーかい」
「あっしの知識を舐めないでくだせぇ。オマケに日本武道館も燃えてるらしいんですよ」
「なんのオマケだよ。不謹慎な」
「不謹慎とは謹慎しないことナリ。火元はやっぱり『レストラン武道』ですかね?」
「こないだの改装で移転したよ」
「マジッスか?レストランだけに『目玉焼きの添え物にタマネギ炒め』ってオチだったのに」
「馬鹿だね。今はタマネギが高いから、目玉焼きが添え物だよ」

超短編 500文字の心臓
第187回競作「誰かがタマネギを炒めている」公開作

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