スノーボールアース

 最後の一振り、つるはし代わりのピッケルを叩き込んだら、下の川原へ。
 吐いたそばから水蒸気がチリチリ凍てついて、ダイアモンドのように照り返す。
 川原で一息ついていると、大きな音とともに氷飛沫が上がった。
 自重を支えきれなくなった氷が滝壺へ落ちたのだ。
 どんなに照っても-20℃を上回れないけど、たしかに陽の光はあったかい。
 しばらくすると、割れた氷の間に魚が何匹か浮かび上がってきた。
 漁の成果としてはまずまず。ちょっと気分が良くて、帰り道でふるさとの唄が口をついた。
 本当に毎日吹雪だったら、世界は凍らないだろうけど。
 帰り着くと、ずっと遠くから続く轍が、家の前で折り返している。
 相変わらずポストマンのじーさんは、雪道で自転車を乗り回してるようだ。
 一通の手紙。
 18年ぶりの春が来るっても、どうしていいか思い出せない。
 アゴを掻いたら、ヒゲが砕けた。
 今夜はしばれるな。

コトリの宮殿 in 超短編マッチ箱
第-1回規定部門投稿作

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