地力の違いで、いつも通り悠々と青鹿毛は有馬記念を逃げていた。
あてにならない追い込み馬に人生を託す。
僕はメインスタンドで、ありったけの20万を突っ込んだ単勝を握りしめていた。
勝ったレースはすべて最後方からの追い込み。負ける時はすべて着外。
そんな白い追い込み馬に自分を重ねて、20万を突っ込んだ。
急坂で脚は止まったが、逃げ切るには十分なリードの青鹿毛。誰もが“勝たれた”と思ったクリスマスイヴ。
サンタなんていないと知ってたし、もうすぐ自分が路頭に迷うこともわかってた。
別に、それで良かった。
僕は憶えている。白い閃光が大外を駆けた有馬記念を。
僕は憶えている。名前の由来となった、雪のように白い躯全部で駆けたヤツを。
僕は信じている。ヤツが残した4世代160頭弱の内、誰かが小雪舞うクリスマスイヴを駆け抜けることを――スノーマンは眠らない!