形の無いステージで
眼前に広がるは、白く光るディスプレイ。
客は自分以外の9人。顔は見えないし、声も今に聞こえなくなる。オンライン表示だけが存在証明で、信じることを求められる。
そう、信じることだけがすべてだ。
ヘッドフォンで封鎖された耳蓋に、己の吸気音が木霊する。応えて脈動するはこめかみ。
演じるのでもなく、なりきるのでもなく、ただひたすらに物語への同一化を目指す。
呼応する観客は眼前に無く、信じたオンライン表示を頭蓋に具現化する。
渇く口腔。
緊張は、まだ朽ちていぬ己を確認する鏡だ。
さぁ、幕を開け! と声帯を震わす。
「
てんとう虫の呪文
」西荻ブックマーク配布チラシ用自主ボツ作
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