たまねぎ〜白縫いさやトリビュート〜

 「あなたの心」なんて盗めやしないけど、葱坊主ちょこんと突き出してるたまねぎぐらいならなんとかなったりで、煮ても焼いても食う気はないけど、まぁ、ダチと伝説のひとつやふたつ作っとかないと、過去に縋りつく惨めな大人にもなれないやと。
 でも、やっぱり俺たちふたりにこんだけのたまねぎは多くて、粗大ゴミか金属ゴミか、捨て置かれた野球好き好きなバット拾って河川敷。
「天然素材は」
「自然に返ります!」
 泣けるほど底抜けの青空。嘲笑するような赤い太陽。
「大きなエゴより」
「小さなエコ!」
 力めば力むほどに大振りアッパスウィング。ホームラン狙いはカスリもしない。
「飴色になるまで」
「炒めます!」
「でも、」
「焦げちゃいます!」
「あ」「あ」
 トス上げたまんまのカッコでダチが止まり、俺は俺でミートの感触に軌跡を眺める。
 茶色い茶色いたまねぎが小さく小さく・・・ならずに落ちる。ボデッとかいって、インフィールドフライ。ちょっとの沈黙のあと、無性に可笑しくなって、ダチも笑いだして、グーでハイタッチで、ガッツポーズ。
「ホント運動神経ねぇな」
「お前に言われる筋合いねぇよ」
 近くで野良犬が唸る。死んでも知らねぇーぞ!

白縫いさやトリビュート

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