しぶといやつ ver DG.

「あら、この人、まだテレビ出てたんだ」
　祖母が言うから誰かと思ったら、昭和の高校球児体型なオッサンが映ってた。
「今も毎月ダルク通ってるらしいよ」
「ダルク？」
「中毒患者の自立支援会」
「へぇ」
　興味の無さそうな返事は、はたして、画面の切り替わりとともに、祖母の関心が移ろったことを示している。
　20年以上前に「そこの中年」と呼ばれたクセの強いちょび髭と巨大な三頭身のコンビは、40周年記念に芸名をまたも「ウルトラ」へ変更し、「えっ？このコーラ、コカ入ってないの？」なんて、本気で巫山戯た名前のツアーを行っている。
「あっ、また出てきた」
　40周年の歌も凄まじくくだらなくて、一般的な感覚では「歌」じゃないけど、彼らの楽曲に並んだら極めてまっとうな「歌」
「変な人だねぇ」
「そだね」
　10年前、普通の人ぶって吸うから捕まった平成のモンブラン。そんなの、あまりにみっともないのに、どうして嫌いになれないんだろ？
「変わんないねぇ」
「還暦過ぎてんのにね」
「そうなの？」
　いつまでも本気で巫山戯続けてくれますように。
「電」を彫った人の、極まった狂気のそばで。

超短編 500文字の心臓
第172回競作「しぶといやつ」未投稿作
from「ANI vs 瀧」「瀧 vs ANI」「聖☆おじさん」

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