しぶといやつ
「この期に及んで、まぁ」
寝起きの声で、呆れたように彼女は言うのだけれど、僕にはいまいちピンとこないので、そのまま乳首を舐め続ける。
今日、日本時間で18:16に世界一大きいダンプカーよりちょっとだけ大きな隕石がカナダのどこかに落ちて、地球上の生物がほぼ死に絶える。
とわかっていても、目の前に綺麗な乳房と乳首があれば舐めたくなるのは仕方がないと思う。
「そういうところが本当・・・
強いね
」
やっぱり、いまいちピンとこない。
諦めるのは論理的で、舐めるのは衝動的だ。大きくなるのは不随意的。そこに強いも弱いもあるのだろうか?色?形?大きさ?いずれにせよ、概念としては乳首は乳首で、乳房は乳房。
「最期ぐらい、
手をつないでいてくれる?」
「良いですよ」
手をつなぐために、まさぐりはじめた指を抜き、すこしだけ体勢をずらして押し挿る。指と指を絡める。手のひらがついたり離れたりする。
意思が3カ所に分散してしまったせいか、いろいろなんだかいまいちピンとこないけど、
気持ちはいい。
超短編 500文字の心臓
第172回競作「しぶといやつ」投稿作
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