しぶといやつ -primitive-
「この期に及んで、まぁ」
呆れたように彼女は言うのだけれど、僕にはいまいちピンとこない。
朝陽が昇って、目が覚めて、朝食を作って、食べて、皿を洗って、掃除して、洗濯して、昼になって、昼食を作って、食べて、皿を洗って、本を読み、草を刈り、水を撒き、山に分け入り、海に釣り糸を垂らし、陽が暮れて、シャワーを浴びて、夕食を作って、食べて、皿を洗い、音楽を聴き、酒を呑み、歯を磨き、寝る。
冬になればタイトに、夏になれば緩やかに、繰り返される諸行無常。穏やかに死ぬまでの日常。
「そういうところが本当・・・
強いね
」
やっぱり、いまいちピンとこない。
社会が生きるのを諦めたので、諦められない僕は生きられるように生きているだけ。
「最期ぐらい、
手をつないでいてくれる?」
「良いですよ」
つい正解を探してしまうけど、いまいちピンとこない。
超短編 500文字の心臓
第172回競作「しぶといやつ」未投稿作
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