三階建て 〜 異邦人
何度も上っている階段が何段あるかをわたしは知らない。数えない。
二度、玄関をつなぐ外廊下を歩く。階段は廊下の端々に設置されていて、10mちょっとの廊下がもどかしさを掻き立てる。
10m。
彼の身長で全長で形容。
身体的特徴で他人を形容するのは小学生以下なのに、大きさ故に誰も気にしない。
わたしの体格では、屋上へ上がるための梯子に手が届かないから、飛びつかなければならない。10cm程度の距離でも。
愛ではない。きっと、わたしは彼と愛し合えない。合わせてもらえない。心情的にも身体的にも。けど、犬猫とだってコミュニケーションを交わせたと信じられたら、愛は生まれる。人間同士も。違っても。
わたしは彼を孤独にはしない。
屋上に敷き詰められた太陽光発電パネルの隙間を、ケーブル踏まないように柵まで歩く。彼はわたしの目の前へ歩み寄る。わたしの身長の分だけ、僅かにわたしの視線が高い。
10cm。
今は飛びつけない。
「
おはよう
」
超短編 500文字の心臓
第181回競作「三階建て」参加作
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