あれは愛である

「この人と別れると思ったら、急に愛おしくなっちゃってさ」
 瓶に押し込めたのだと、母は快活に言ってから笑った。
 厳密には、
「瓶で殴ったところ手が滑って飛んでストン!」
 が正解らしい。
 初めて聞いた思春期には、我が母ながら、ツッコミどころが多すぎて、どこからダメだししたものか悩んだ。
 けれど、実際に3年の結婚生活を終えて実家に帰ってきてみたら、なんだか腑に落ちてしまったから、わたしは紛れもなく母の娘だ。
「そんなもんだよね。男と女なんて」
 母と二人、今なら聞けるあれやこれやを肴に、ホッピー呑み明かす日が来るなんて思いもしなかった。
 わたしたちは家族をやり直すのかもしれないけど、父は瓶の中で豆本読んでるから、グラスを交わすことはできない。残念。

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