等身大の肖像

 自由を手に入れた。
 「自ら」の「由」とすることを実践するのが「自由」であるなら、まさしく、今この状況は、自由以外の何物でもない。
 すべてはあの日だ。あの、大地が大きく揺らいだあの日だ。
 あの日から、俺たちにはどこまでも大地を闊歩する自由が与えられた。波が洗い流して積み上げた瓦礫の中を、走り回る自由が与えられた。
 俺は俺を「牛」だと理解しているから、この自由が、いつか「人間」に剥奪されると想像できる。あの日以前の日常が回復されることを期待すらしている。
 しかし、今の俺は自由だ。俺の自由は俺のものだから、誰にだって邪魔はできない。させない。
 俺は走る。走る動物だからこそ、今ある自由を走る。「自ら」の「由」とする「自由」を走る。
 いつまでだって。
 どこまでだって。

超短編マッチ箱beco cafe 出張編」提出作

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