うめえよ
汗でバッシュが滑って、ぶつかって、笛が鳴って、そんでまた、フリースローレーンへ。
「外れろ」と願うのはとっくに諦めてて、「田舎の中学のクセに選抜いるとか、ハンデつけろよ」なんて、アップん時の愚痴を思い出す。
ヤツは何度か床で弾ませて、綺麗な音がして、今度は何度か床で弾む。
ウチのセンターは、審判より先にボール取って、ヤツに渡す。
教科書みたいなキャッチ。床で弾ませて、繰り返し。放物線が勝手に焼き付く。オッサンなったら、「アイツとバスケしたんだ」とか言い出すのかな? とっくにアイツは忘れただろうワンサイドゲームを。だっせー
意識しないで回したパスがギリ通って、でも、ウチのガード馬鹿だから、やっぱライン踏んで、ただのロングシュートをリング掠らせもしない。苦く微笑むから一瞬ムカッとして、俺、案外バスケ好きだったんだなぁって気づく。
なんでアイツみたいになれなかったんだろうなぁ。
なんで今のパス、適当に回しちゃったんだろうなぁ。
時計を見ると、あと15秒。
ヤツのペネトレイト、ラスト一本、止めてみてぇ。
超短編 500文字の心臓
第142回競作「うめえよ」投稿作を一部修正
Special thx 氷砂糖
「あの娘ぼくがロングシュートきめたらどんな顔するんだろう」
WORDS & MUSIC 岡村靖幸
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