不幸せではない
空いてるから、ボックスシートを占拠して、車窓を流れていく黄金色の田んぼをボンヤリ眺めながら、息子の寝息と線路の継ぎ目の音を交互に聞く。
鈍行を乗り継いでくから、苫小牧までは5時間はかかる。おっぱいはいつでもあげられるけど・・・札幌で乗り換える時に、おむつを替えればなんとかなるかな?
鞄に詰めた替えのおむつの枚数を確認しつつ、現実的な算段はすぐに決められるんだなぁ。と、一人ごちる。でも、どうしよう? 旦那とこの子の生活を。
気が短い分、割りきりの良い人格だと自己評価していたのに、ああいう人だとわかって結婚も出産もしたのに、娘だってお腹の中にいるのに、離婚となると決心できないのが不思議だ。
汽車は、奈井江を突っ切って、もうすぐ美唄に着く。アッちゃんがまだ苫小牧にいてくれて、本当に助かった。1日違ってたら、アッちゃん秋の十勝登ってて、逃げるとこが無かった。わたしも登りたいなぁ。
「短気は損気」と繰り返す母は、きっと自らの失敗を踏まえてて。父だってそう。わたしは彼らの子どもで、この子は・・・汽笛が鳴って駅が近づく。息子が目覚めてグズりだす。
超短編マッチ箱西荻出張編「
声に出して読まれたい超短編
」応募作
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