嘘泥棒 light mouth edition

「おっ! 今日もかぁいいねぇ」
「はいはい」
 コイツはいっつも、軽くて、てきとーなことばっか言ってて、ブサイクなわたしを馬鹿にする。だから仕掛けるのだ。策略。いい響きだなぁ。お世辞にもできた頭じゃないけど、常にこゆこと考えてる時ぐらいの回転数なら、わたし、きっとなんにでもなれたんだろうね。
 あんまり作ったことないシリアスな顔で、しっかり目をあわせて。
「好き」
「えっ?」
「な〜んてね」
 大袈裟めにアハハと笑う。傍目にはいつもと大差ない軽口だろうけど、「ヤツはとんでもないモノを盗んでいきました」って古代の言い伝え信じるなら、人の心はスペシャルでしょ? なら! って話。コイツのフワフワした心が、こんなフェイクで盗めるなんて思ってないけど、万に一つのもしかして信仰は、結構楽しい。
「なにアホ面晒してんの」
 まるで、鳩が連射した豆鉄砲で撃ち抜かれたみたいな。ゴメンね。わたしがもうちょっと、ホントに「かぁいい」かったりしたら、もうちょいマシな顔できたかもしれないのにね。ゴメン。言葉もシチュエーションもまるでなんかのパクりで、だからきっと心だってそうだよ。
「俺に惚れると火傷するぞ」
「冗談顔だけにしてよ」

超短編 500文字の心臓
第96回競作「嘘泥棒」未投稿作
R.I.P. Gary Coleman

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