綿ら畏怖

 納涼ついでと、ノストラダムス全盛時代の「ムー」ばりに気合いの入ったオカルト本読んだせいか、丑三つ時に目が醒めた。
 金縛られたわけでも、首やら足やら命やらを取られたわけでもなく、ただ、部屋の隅が囁き声で騒がしい。腹筋全開 so slowly に起きあがると、耳を声の方へ澄ませた。
「バカ、俺の方が綿だよ」
「黴の分際で!」
「そういうアンタに綿が付くのは雪降る直前だけでしょ?」
「地面にたどり着けなかったお局様は、けたたましいのぅ」
「なんですって!?」
「そんな顰めっ面してるとシワが増えちゃうぜ。そこ行くとオイラなんか生粋の綿だから」
「つっても、お前ら全部埃扱いじゃん。普通」
 慌てて口を手で押さえたけど、部屋の隅には気まずい空気が漂うだけだった。

 な〜んて話、あの綿雲から降ってきた綿雪が「これですっかり綿だろ」なんて囁くまで、完全に忘れてました。一分の綿にも五分の魂。すんません。


「つながる超短編」参加作を加筆修正

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