砂漠に雨が降る時

 明度の低い鮮やかな黄色が、広すぎる視界をこれでもかと占めあげる。その中央には丘じゃなく、山と呼ばざるを得ない1000m級の異形が鎮座していた。
「こりゃ凄いわ。こんなん造ったなら赦したげたら?」
 パートナーはそう言うけど、たぶん、パートナーが力ンカソ3星人だったらじっちゃんは激怒しただろうから、苦笑で誤魔化す。
 そもそも・・・僕が・・・僕だけが・・・赦す?

 じっちゃんが言うには、雲の生成は山と湿度が必要で、だから海風を導く川と、山を造らねばならないそうだ。地学的には正しいらしいけど、それをじっちゃんがやる必要あるのか?といえば、そんなわけはなく、だから我が家は破綻・離散した。
 のに、僕はこの星へ帰り立った。
 酷く納得いかないのだけど、じっちゃんの遺骨を誰も引き取らないから仕方が無い。骨に罪は無い。むしろ、崩壊家族から遺骨まで押しつけられた関係者はいい迷惑だ。

雲が出るぞ!
 誰かの声で山の上を見ると、靄に霞始めている。この星では、雲は出るモノなのだ。雲が出るようにした人はたしかに凄いかもしれない。家族としては屑だったけど。
 おそらく、僕の吐く息が雲を雲たらしめる。やがて。

お笑い大惨寺・超短編7月「砂漠に雨が降る時」優秀賞作を改訂

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