野音のステージ向かって左にある高い木の下で初めてライヴを見た話

GO ACTION!
 大きな声は叫びというより引き鉄で、周りにいた大人たちは、大きな声の前に鳴ったイントロの一拍目から、その声を待っていたとわかる。
 僕の一番古い記憶。
 僕の走馬燈は、このシーンではじまって、このシーンで終わる。たぶん。きっと。
 産まれた時の肺に空気が満ちた苦しさなんかと比べたら、よっちゃんの声の方が何倍も衝撃的で、いかにも僕らしい走馬燈だ。
 残念ながら僕に音楽の才能は無かった。残念ながら。けれど、もしくは、だからこそ、毎年両親が連れて行ってくれる、離婚後は母が連れて行ってくれる、僕の成人後は母と時々のパートナーを連れだって行く野音は、音楽との大事な接点だった。

 違う。過去形じゃない。
 今もなお。

 もう、あの時の野音は無いし、僕はもうすぐ死ぬ。ほとんどみんな、もういない。
 とっくの昔から、僕にはよっちゃんの歌声が聞こえているけど、まだ走馬燈は気配だけ。
 あとちょっとだけやることが残ってるんだ。だから、
GO ACTION!

野音のステージ向かって左にある高い木の上に営巣した鳥とかの話」を改訂

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