次の週は土砂降りだった。だから波が雨粒を喰らわんばかりに跳ねていたと覚えている。
同じように低周波が波立たせていたが、雨に相殺されて一番になり損ねた。ただ、そこにいた人間の声の多さで記憶されている。響き。
この週は全周より多かった。男達が鬼気迫らんばかりに吠えていた。反抗する魂の欠片が、雨粒となって降り注ぎ、波を砕いた。
けれども波は我では無く、我は砕かれず。波はまた起こり、夏を記憶し続ける。
「野音のステージ向かって真反対にある雲形池か波立つ話」を改訂
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