夜の森線

 夕方、歩道橋の下を人とか自動車とかが通り過ぎていく。遠くまで見通せるから、いつもより視野に収まる数が多い。
「今見える人全部足したら、ウチの田舎の人口越えるカモなぁ」
 不意に彼が呟いて、さらに強く手を握った。
 近くて遠い、きっとわたしたちが生きてる間じゃ住むことも許されない彼の田舎。誰もいない町。
 握り返しはしないし、結局、彼の田舎へ連れて行ってもらえなかったわたしは、思い入れもない。
「カモねぇ」
 ビルの谷間で、ブレーキランプが電流みたく順番に灯る。

第0 1/2回「超短編のパトロン」サンプル作品

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