妖精をつかまえる。
猫に小判。豚に真珠。馬に念仏。弘法に筆。河童に川。
わたしは考えなければならない。ありったけの集中力で考えなければならない。切れて湿気ったシナプスを火炎放射機使ってでも発火させて、考えなければならない。
指輪。ピアス。手紙。写真。栓抜き。スーパーボール。
違う。
「フェアリーテイル」なんてふざけた名前のゼブラ茄子を食べながら、カロリー大量消費器官全開で、わたしは考えなければならない。すくなくともわたしは、尻尾が生えた彼ら・彼女らを見たことがない。
猿に木。虎に狐。鰻に西瓜。小人に靴屋。
違う。
彼ら・彼女らは小人ではない。アニミズムな精霊に属する彼らは、靴を盗んでも靴は作らない。
豆腐の角に頭。隣の家に囲い。ト書きに当て振り。東電に倫理。トムにジェリー。
わたしは考えなければならない。この罠に相応しい餌を。彼ら・彼女らを捕らえるに適切な餌を。もうすぐ、彼ら・彼女らが現れる時間だから。盗品の在処を聞かなければならない。色褪せていく想い出を取り戻さなくてはならない。わたしの前に彼を復元しなければならない。彼ら・彼女らに。考えなければ。必ず。なければ。ならない。
超短編 500文字の心臓
第120回競作「妖精をつかまえる。」参加作を一部加筆修正
トップ
>
空虹桜
短編集 バージェス頁岩
> 妖精をつかまえる。
(C) Copyright SORANIJI Sakura,2013
e-mail
bacteria@gennari.net