指先アクロバティック
驚きと動揺と怯え。
数多の感情が同時に噴出したのは、ディーラの少女がカードを鳩にしたから。
客が求めより先に少女はカードを新しいセットに交換し、シャッフルをはじめた。
いつにも増して客は少女の一挙手一投足に注意を注ぐ。こぎみよいリズムは彼らの耳に届かない。
バレさえしなければ、イカサマは正当なテクニックである。
すぐさまカードは少女の小さな手に馴染み、2つに分かれた。
バレさえしなければ、マジックには拍手と歓声が続く。
2つの山はスムースに流れ、1つに戻った。
マジックもイカサマも似たようなもの。どちらも少女の小さな手が支配する。
テーブルの上、淀みなくカードは配られた。
ゲームが始まる。
超短編 500文字の心臓
第46回競作「指先アクロバティック」参加作
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