MSGP2006 エクストラマッチ
ドリームマッチ 1stweek
2nd Match「くすくす」

Win 脳内亭 6-1 瀬川潮♭ Lose


>脳内亭<

 毎度のおはこびでありがたく、相変わらずの野蛮な処を一つ。
 箸がころげてもオカシイてェ事を云います、お客さんにもそういう了簡の方がおりましょう。しかしまァ十人十色、箸がころげても怖いてェのも中にはあるようで。まんじゅう怖い怖いから食っちめェなんて咄もありますが、さてここに笑い声が怖いという奴がいる。どうぞ聞いても笑わねェで下向いといて下さい。
 久兵衛てェ、普段は気のイイ野郎が、あるとき廓で年増としっぽりてェ処、「久さんまだかェ。ぐずぐずしちゃヤァヨ」「まァ待て。どうでェ、すくすくと立派だろ」「あれお前さん、くすくすくす」トタンに久兵衛、暴れたのなんの。ワラウナ危険と洗剤みてェな了簡で。出刃を持ち出し、見境なしに花魁女中どもをブスーッ「アレー!」「ヒエー!」「ビジンー!」厚かましいのがいるねオイ。「か、堪忍しとくれ」ブスーッ「アァー! く、薬薬……」「笑うんじゃねェ、笑うなてンだ……わからねェ客だなオイ」

「ああいけねェ、またヤッちまった。しかしまァ皆、ウグイスかッてくれェ、イイ声で鳴いてやがったな。自分で自分にお経あげるたァ都合がイイ、『ホーホケキョ』なんてェ」
 おあとがよろしいようで。

>瀬川潮♭<

 往来喧騒ともに激しい主要道を走るトラックからピアノが脱走した。時価ン千万円のスタインウェイだ。ぐらんがしゃんと路面に着地すると蓋が開いたまま下り坂を激しく逆走する。
 二車線に群れなす車はモーゼの十戒のごとく割れきききぐわんがしゃん。気付いたトラックと尾行していたピアノ泥棒らの車も向きを変え「調律が調律が」とか言いながら黒い姿を追う。ピアノの方は微妙に凹凸したアスファルトをなぞるように白黒の鍵盤が波打っているが都会の騒がしさで聞こえない。演目は「ラプソディー・イン・ブルー」か「パリのアメリカ人」か「幻想交響曲」の一番激しいところか。やがてファンファン集まるパトカーに救急車。さらにはどこで嗅ぎつけたかクラシックファンらの車が加わりドップラー効果で変調されサイレンやらエンジン音やらと協奏する旋律に耳を傾けながら「んー、レアである」。
 終章はちょうど赤信号になった坂の下の交差点かと思いきや翼が開いてテイク・オフ。一気に音速を超えたようで、ソニック・ブームがすべてを薙ぎ払う。
 静寂。
 やがて赤方偏移した「猫ふんじゃった」が陽光と共に降って来た。どこか音が出なくなったか、悪戯っぽい笑い声交じりだ。

水池亘
2006/09/28(Thu) 05:28
取り急ぎ。やばいやばい。

勝者・脳内亭
脳内亭作、いやー笑えない笑えない。背筋のゾッとするブラックコメディ。タイトルの孕む不気味さを掬い取って見せた手腕が見事です。
瀬川作、どこか違和感のある中盤のドタバタ、しかしこれが心地よくもあり。ラスト二行も絶品。

迷う。迷うけれども、タイトルとの相性や描きっぷりの良さから脳内亭作に一票で。

1500文字で心臓爆発
2006/09/28(Thu) 04:39
勝者:脳内亭
御免なさい。御免なさい。選評はのちに・・・・・・・・のちに、かきます。

いさや
2006/09/28(Thu) 01:39
 取り急ぎ。

勝者:脳内亭
 どちらも巧いから困る(苦笑)
 個人的趣味は断然瀬川作なのだけども、好きすぎてくすくすにはならず。めっちゃ褒めてますよッ(ここ大事)
 脳内亭作。圧巻。ホーホケキョで締めるかそうですか。ここまで巧いと逆に悔しくなるのです。試合に関係ないけども。

はや♪かつ
2006/09/28(Thu) 00:00
では結論から。

勝者: 脳内亭

お題とのフィット感で。しかし落語調が巧みです。厚かましいのがいるねオイ、とか素晴らしいです。あまりのことに笑うに笑えず、見事にくすくす。

瀬川作、とっても好みの作品ですがお題とのマッチ感で採れず、残念。調律を真っ先に気にするあたり大笑いだったんですが(だから「くすくす」じゃないのかも?)。それから音楽好きの悪いところ前回でツッコミ入れますと、蓋は鍵盤の蓋か上蓋か。ピアノが勝手に奏でる曲を推測して挙げたタイトル3つのうちピアノの活躍しない(あるいはない)曲が2つだったりとか。個人的にラプソディ・イン・ブルーはフィット感あるだけに残念。本当はもっとカッ飛んだのがいいにはいいのですが、作品として共有できなくなりますしねえ…難しい(ちなみに個人的な候補最右翼はクセナキスの「ヘルマ」とか)。

不狼児
2006/09/27(Wed) 19:54
勝者:脳内亭

脱帽。おあとがよろしいようで、としめられる評を書こうと思ったけど断念。爆笑しかねる笑いがツボです。瀬川作もえらく楽しいドタバタでしたが、曲目はフツーすぎるかも。ラブホテル・イン・マンデーに、バリのケチャ、喧騒交響楽、ぐらいふざけてくれた方が趣味なので。

マンジュ
2006/09/27(Wed) 14:22
勝者:脳内亭
 うわーん、どっちも好きだ。両者とも何だかどたばたっぽいのがよい感じ。それでいてラストですとんと落ちるというか。
 瀬川作、脱走したピアノとか「調律が調律が」「んー、レアである」なんかすごくツボなのですけれども、やはり脳内亭作の「ビジンー!」が。笑った。いや、笑っちゃいけない? 笑い声の怖ろしさなんかにも共感。

空虹桜
2006/09/26(Tue) 22:18
脳内亭作:「くすくす」のヴァリエーションで攻めてくるとは!と、思ったら下ネタ!エロじゃなくてシモ!(笑)

瀬川作:「ドップラー効果」と「赤方偏移」は鉱物なんで、出てくるだけで+1(笑)それにしても、こゆ時音楽的基礎教養の無さが足を引っ張るなぁ。

で、悩んでるですが・・・読み手の「くすくす」度で瀬川さんの勝ち。
逆に言うと脳内亭作の方が笑えたという(笑)
それにしても、ひらがなお題なのに、両作ともカタカナが多いなぁ。

hyo+tan
2006/09/25(Mon) 12:14
うわー。悩む。これどっちも好きだなあ。

勝者:脳内亭

脳内亭作、「ビジンー!」に笑ってしまいましたよ。あ、笑っちゃいけないのか?!
笑い声ってのは確かに怖いし不愉快だし、傷つく。
そのへんの機微がいい塩梅で出てるなあ、と。・・・・・・なんか言葉足らずですな。

瀬川作、ずっとやかましかったのに最終段落での静けさと「くすくす」がすごくドラマティック。

うーん、まだ判定迷ってます。(笑)

脳内亭
2006/09/23(Sat) 06:40
 参加試合、感想のみで。
瀬川さん、お手合わせありがとうでした。
疾走するピアノ、個人的には「Mardi Gras In New Orleans」を
奏でていてくれたら楽しいなぁ。踊り踊れそれドンパッパ♪

BACK!



空虹桜HP アノマロカリスBANNER
e-mail bacteria@gennari.net