>瀬川潮♭<
猫がいた。俺の隣。
空港の待合室、籠の中からじっと俺を見ている。
猫がいた。俺の後ろ。
空港のトイレでパタンと開いた個室から出てきて、ちょっとこっちを見た後したたたたと手も洗わず出ていく。
206便のシートに落ちついた。さすがに猫はいない。
ほっと深く沈み込み、背もたれに身を預ける。
それにしても世の中猫だらけ。
いつかの夏、先祖の墓を訪ねたときもそうだ。
誰かの墓の前で、じっと。やがて続々と集まり猫だらけ。
いつかの冬もそう。
居酒屋のコタツに足を突っ込むと、ぐにゅ。めくるとにゃあにゃあ逃げてった。
なぜこうも猫だらけか。世の中狂ってる。
その時、飛行機のエンジンが爆発した。怪我はなかったが、折れたキャビンからほかの客と同じく投げ出された。
空は斜光に赤く焼け、高かった。このまま地に墜ちておだぶつかと思ったとき、にゃあ。
猫がいた。俺の周りに。何匹も、何種類も。
着地に備えてか、そろって身をくるくるひねっている。
にゃあ、と猫。くるり。
目が合う。
生きろ、と聞こえた。正論だ。夕日をバックにまぶしい。
数多の猫にならい、俺も、くる。
翼のように広がる隊列。時が止まった気がした。
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>空虹桜<
『ダンスフロアーに華やかな光――』
暦は巡り、Over Seventy おばあちゃんたち、踊り狂い。おじいちゃんたち、DJブースに指差し突きさし、叫び跳ねし。
『1 2 3を待たずに24小節の旅のはじまり――』
縦に横に斜めにゆらり。おばあちゃんたち、飛んだり跳ねたり。回す皿に蹴られるkick it。煽り唄いし老いゆく王子。
『よくない コレ? コレ よくない?』
おばあちゃんたち、杖をフリフリ。
『よくなく なくなく なくなくない?』
おじいちゃんたち、レスはバッチリ!
『ワイルドな君、麗しのプッシーキャット――』
Everybody 夜通し踊り。おばあちゃんたち、芳紀再び。おじいちゃんたち、恋に落ち。若かりし日々、夜は Bubbly。老いて未だに、朝まで Dancing。老人クラブに満ちる4つ打ち。
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