MSGP2006 エクストラマッチ
リーグ戦 4th Match「子を運ぶ」

Lose マンジュ 2−3 空虹桜 Win


>マンジュ<

 妻を連れ、暖かな国へ向かう船へと乗りこむ。何時の出港ですかと問うと午后一時ですとの返事。まだ少し余裕があったので、私は一度船を降り妻のために水気の多い果物を買ってきた。妻は旨そうに赤やら黄色やらの果実を口に含む。身重の妻に船旅は少し酷だろうかと、色のない唇の端を伝う甘い汁を眺めながら思う。
 胎の子は私の子ではない。かといって妻の姦通のあったわけでもない。なぜならば妻の性器は先天的に閉じており、性交渉を行うこと自体不可能なので。月のものもない。言ってみれば妻は清廉な処女であり、少女だった。
 神の子だろうと私たちは微笑み合った。妻の笑顔はこの上なく奇麗だった。私は妻を愛している。
 暖かな場所へ行かなければならないわと妻は言った。身籠って九箇月目、そろそろ臨月を迎えた頃だ。ああそうだろうねと私は答えた。何となく私にも判っていた。そこには何百年も前から根づいている大木があり、ちょうど人が一人横たわれるだけのうろがあることも。汽笛が鳴り、いよいよ船は港を離れた。神の子が正しい場所で生まれ落ちることを信じ、私たちは固く手を握り合う。

>空虹桜<

 ベルトコンベアの上を透明なプラスティックの箱が流れる。両脇に立つ純潔の少女たちが手足に頭、小さな胴を箱に放り込むと、次に控える少女たちが赤い糸でそれらを縫い付ける。
 五体満足となった人形は、これまた純潔の少女たちによって、平らな胸を揉みしだかれ、未成熟な陰核を擦り上げられる。その時、人形が表出する感情は、少女たちに自信と嫉妬を与える。不良品より生まれた完成品に対する自信と嫉妬。
 少女たちが人形に服を着せると、透明なプラスティックの箱は機械によって密閉される。
 これら流れ作業は毎日続き、不良品の少女たちは同じことを繰り返す。ベルトコンベアの向こうを知らない少女たちは、いつか朽ちて、ようやく外を知る。

2006/09/08(Fri) 17:57
間に合えーっ。っていうか、もう迷ってる暇ないぞ!

勝者、空虹桜。
タイトル度をとればマンジュさんなんだけど、「不良品の少女たち」によって成り立っている世界に現実を見てしまい、そのやるせなさを最大評価。うー、迷いました。

はや☆かつ
2006/09/08(Fri) 12:45
自分の参加作と同じお題なのでジャッジしづらい…

勝者:マンジュ
神の子、閉じた性器、これらにより子を産むことより「運ぶ」務めのほうがより重要であるかのように、くっきりと主題が浮かび上がってきます。美しい。空虹作は意表をつく硬質なイメージが美しいのですが、ベルトコンベヤだと「運ぶ」が背景に沈み込みがちに思えるのと、やはり「子」(「子ども」ではない)という題にややそぐわないか。

いさや
2006/09/07(Thu) 23:43
途中で投稿してしまいました。すいませんすいません。
空虹作の感想だけ。
なんて素敵シチュエーション。ビバ☆人形エロ。
マンジュ作が中の見えない物語なのに対して空虹作は外の見えない物語。面白い構造だよなあ。ううん。

いさや
2006/09/07(Thu) 23:37
難しいなあ、もう。投票権を放棄したろうかと思うくらい、難しいです。ああもういやん。

勝者:マンジュ
僅差です。
マンジュ作:船出、暖かい国。未来が輝かしく見えれば見えるほど影が色濃く大きく見えます。どこから凄惨な臭いが漂ってくるのだか。やはり、子からか。

空虹桜
2006/09/07(Thu) 22:02
マンジュ作:「子を運ぶ」のタイトルで「処女」の「少女」を書いてるところが、二人揃って病んでるなぁと思いました(笑)それにしたって、強い背景相手にしっかり書けるってスゴいなぁ。

不狼児
2006/09/04(Mon) 21:34
勝者:空虹桜
子を運ぶというタイトル的にはマンジュ作でしょうが、若干丸く収まりすぎな気も。
継ぎ目、傷跡、赤い糸、が美しい、空虹作に。

脳内亭
2006/09/02(Sat) 06:43
 「硬派鼓舞」だったら嫌だなぁとか考えてすいませんすいません。
勝者:空虹桜

マンジュさん作:希望という悲劇を感じます。処女懐胎の虚しさよ。ふと気になったのですが、出口がないのにどうやって、と考えた処で寒くなりました。やっぱり悲劇だ。
空虹さん作:人形エロ。実は自身の未発表作に人形エロがあって思わずドキリ。人間は骨、人形は継ぎ目がエロいとか主張するのは歪んでますかそうですか。「これまた」の一語だけがやや浮いている気がしました。
こちらあちらと揺らいだ末に空虹さんに一票。名勝負。


BACK!



空虹桜HP アノマロカリスBANNER
(C) Copyright GHP,2006
e-mail bacteria@gennari.net