雑感・レヴュ集 メタセコイア
展覧会とか

イヴェント名記述者記述日
ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?
——国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ
唸るバクテリア2024/06/28

本文中のリンク先には、アフィリエイトを含むことがあります。ほぼお金になってないですけど。

GWでも、ちょっと空いてるんじゃないかしら?と「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?——国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ」を、国立西洋美術館まで見に行きました。
思いの外混んでたよ!甘く見てた僕が悪いね!
ビックリすることに出展リストの紙が残ってなかったよ。
大盛況。
全然現代美術に感心なさそうな人も普通に来てたし、チケット行列には常設展に来た人も結構いた。
それはともかく、最後のセクションの近藤夏子と辰野登恵子が素晴らしくて悶絶してしまう。
最後だけど、ここで元は完全に取ったと思った。
今までに無いような、西洋美術館らしからぬ導線設定。
降りて上って映像インスタレーションがあり、現代美術展らしく、文字が躍る。
全般的に問題提起は明確で、西洋美術館の危機感、あるいは、日本の美術とか文化みたいなモノをどうするべきか?の問いかけに満ちた展示。
おそらく、リニューアル後だからこそ余計に、明確な新自由主義に対する警戒がある。文化を蔑ろにする日本に対する懐疑がある。
そして、前半はとくにモダンアートが持つカウンター性みたいなモノが、存分に発揮された作品が続くのだけど、アート業界はそれを批評性と呼びたがるのだが、しかし、その手の創造性はカウンターなので権威がいないと成り立たない問題を抱える。
西洋美術館の抱える問題の問い直しとしては正しくあるのだけ、それは行き詰まらないかな?とは思う。
ル・コルビュジエやセザンヌやゴッホやムンクやモネやモーリス・ドニが、不意を突いて展示されているが迂闊な人は気付かない。
小田原のどかが「考える人」や「青銅時代」を転倒させてるのは、頭頂部見たことないから楽しいのだけど、そこには西光万吉の「毀釈」や上野大仏が健在だった頃の写真が並ぶ。
似たような話で、モネの「睡蓮、柳の反映」を壊れたままで良しとする西洋美術館のジャッジに、竹村京が釡糸、絹オーガンジーで補填・補完するというのが、発想の転換というか、素晴らしいなと。
小田原のどかの展示と呼応していて、芸術の捉え方・アプローチの対称性みたいに見える。インスタレーションとしても、作品の間(本当に「作品の間」)に入れて面白い。
そう、モネの中に入れるわけですよ。
長島有里枝が、写真というよりは社会活動的な展示をしているのだけど、そのあとに幕間として「上野公園、この矛盾に充ちた場所: 上野から山谷へ、山谷から上野へ」という、弓指寛治のホームレスのおいちゃんを追いかけた展示が続く。
これは空虹さんと見た方が良かったかしら?とも思う。
上野公園にホームレスのおいちゃんがいっぱいいた頃を辛うじて知っている身としては、こないだ図らずも吉原行ってた身としては、なかなか思うところがある。
キャンバスの厚みの部分にも描かれているのは作風なのだろうけど、この展示には意味が強くなる印象。平面以上に描くモノがある。
図らずも、珠洲まで出てくる因果すら。
そして、ムンクをモティーフにストリップするという遠藤麻衣インスタレーションがあったのだけど、もうちょっとだけ、エロさが欲しかったな。とか。
けど、インスタのこれを見て、
この投稿をInstagramで見る

遠藤麻衣 MAI ENDO 𓆙(@iewopua)がシェアした投稿


宇佐美なつのパフォーマンスや、川崎重工へのパフォーマンスを見るにつけ、俺の解釈は下卑てるなぁとは思う。
展示前にちゃんと注釈があったり、カーテンの奥(だからこそインモラル感があって良い)だったりするのは、テンション上がって良いのだけれど。
で、最後のゾーン。
今と過去が並ぶ感じは、今回の展示に相応しいなぁと。
とくに辰野登恵子は、タイトルが通番的に付いてるのが悔やまれるのだけど、そこに並べられるのはモネの睡蓮。ジャクソン・ポロックの「黒い流れ」
近藤夏子の過剰なまでの狂気じみた描き込みと、それに対照されるルノワールの「木かげ」
もしも、「Tiles」や「Tiles | Signals」や「入口」のTシャツが売ってたら、迷わず買い込んでたに違いないほどの狂気。
良い展示だった。
日本における西洋美術館という、ある種の自己矛盾に対する誠実さ。
存在意義をこれから先、ずっと西洋美術館は問い続けるのだと思うと、なんて辛いことを選んだろうと。
でも、そんな西洋美術館が余計好きになった。

広告

BACK

雑感・レヴュ集 メタセコイアBANNER
(C) Copyright Unaru Bacteria,2024
e-mail bacteria@gennari.net