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邦画

作品名記述者記述日
怪物唸るバクテリア2023/07/13★★★★

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予告の時点で不穏なのがたまらなかったのもあり、映画「怪物」見ました。
現時点で邦画今年ベスト。
是枝作品を映画館で見るのも、坂元脚本を映画館で見るのも、何気に初めて。たぶん。
劇伴坂本龍一も初かな?
おかげさまで、見事なまでに面白かったけど、二度と見たくない映画となりました。
この感慨は人生2回目。1回目は「パラサイト 半地下の家族
なんだろ?新宿ピカデリーで見て、そのまま大好きな王ろじへ駆け込んだのだけれど、たぶん、逃げ込んだか正しい
もともと行くつもりだったけど、よくわからない動揺を隠しきれなかった。好きなものでも食べなかったらやりきれなかったに違いない。
傑作なのは間違いなくて、麦野早織 as 安藤サクラ巧いなぁ。と抱いていた前半の感慨が、是枝監督の恐ろしいまでの子役演出が炸裂しまくって、中盤以降すべて吹き飛んで、常に怖い。ヤだ。怖い。ヤだ。怖い。としか考えていなかった。なんだこの映画
結局、全員不幸なままじゃないか。
「怪物だ〜れだ」
のパンチラインが、まさかアレだとは思いもしなかったのだけど、いやいや、子どもにこの芝居をさせるのが適切なのか?は、疑問ではある。
しかし、子どもでなければ描けないのも事実
麦野湊 as 黒河想矢と星川依里 as 柊木陽太が素晴らしすぎて、とくに柊木陽太のナチュラルっぷりは、今後、どんな役も自由にこなしそう。
黒河想矢ともども、夏休みJC・JK向け映画の主役になること請け合い。
でもって、おそらく、本当に「怪物」と呼べるであろう役どころに、星川清高 as 中村獅童と伏見真木子 as 田中裕子を置くのは、本当に配役の妙というか、是枝監督クラスじゃなければ出来ない芸当ですよね。まったく。
狡い。

ちなみに、主役3人(安藤サクラと子役2人)の着ていたTシャツのプリントには、それぞれ意味があったように見えたのです。
読み解ききれなかったのだけど。
パンフは信頼の大島依提亜で、ジャケが見事なのだけれど、出来れば子役のマッピングがすべて欲しかったところ。
教室内の座席表的な感じで。
役柄的に個人を特定してしまうのはマズいかもしれんが、湊の隣の女の子(たぶん、役名が美青)は、今後伸びる子でしょ?

当初、上映時間が、ちょっと長いなとは思ってたんですよ。
テレビで放送する長さに収まっていない印象
だがしかし、この恐ろしい三部構成であるならば、これだけの時間がかかるのは仕方がない。
序盤、まるで富野由悠季ばりに、テンポよく状況説明とキャラクター紹介を進めるから、この尺どうやって埋めるの?思ったら、なるほど。そういう理由ですか・・・辛い
坂元脚本も是枝映画も巧すぎる。
パンフ読んで膝を打ったのだけど、坂元脚本が先だったのね。なるほど。
あと、エンドロールでLED撮影とかVFXにビックリしたのだけど、LED撮影はもしやきっとあの隧道に違いない。それと、嵐。嵐の通行止め。
とりあえず、呑み友達の映像関係にLED撮影を訊いたら、消防法的に撮れない冒頭の火事のシーンでは?と。
なるほど・・・
あと、雨をVFXで増やしてたんじゃないかと思うのだけど、車から飛び降りるシーンもVFXかな?
いずれにせよ、諏訪の地で撮られたことが意義のある映画に見える。
ある種の霊力が満ちた土地であれば、意図しない「怪物」も出現しよう。
諏訪湖を背景に滑り台を兼ねた展望台登るシーンは素晴らしい。
でも、子ども主人公で、クィア・パルム賞で、「怪物」のタイトルは本当にいいのか?
どうしてもここが引っかかる。
岡室先生がパンフのレヴュで
私には彼らの結婚式に見えた
と書いてらっしゃるけど、この点に関してはまったく同意しない。
素直に読み取った身からすると、死ななければ次のステップへ行けなかったという解釈は極めて日本的で不愉快だ。
岡室先生が最後に引用してらっしゃる伏見校長の台詞
誰かにしか手に入らないものは幸せって言わないの
を踏まえれば、岡室先生の解釈は「幸せ」たり得ない。
なお、アトロクの是枝監督インタヴュによると、「怪物」のタイトルは当初違ったらしい。
ならばこそ、やはりこの映画は怖い。

にしても、鈴村広奈 as 高畑充希は素晴らしいなぁ。
顔が怖い 」という保利道敏 as 永山瑛太の配役の妙もあるのだけど、ああいう、なんでそんな男と一緒にいるの?みたいな役どころが見事にハマっていて、さらに好きになりましたとさ。
女の『また今度』と男の『大丈夫』は信用するな。って学校で習わなかった?
は、高畑充希に言わせた台詞の中でもピカイチだし、あそこでキスされたら、男はそれ以上追えないですよ。ぎゃふん。
この人に人生狂わされたら、諦めがつくのだが。
あと、安藤サクラの腹掻き芸と、無闇な野呂佳代のPTA感ね。
野呂佳代が、こんなにも性格俳優みたいなポジションになるとは!

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