高校の時に
ハードカヴァ上下巻読んだ時には、まさかフランスで作成されたアニメを見る日が来るだなんて!
と「
神々の山嶺」を見ました。
高校在学当時、空虹さん絶賛だったんですよ。ええ。ええ。
実写映画?なにそれ?おいしいの?
あの話をどう90分程度の尺に収めるのかと思ったら、結構バッサリ話を切ってまとめていたり。
その結果、
全体の張り詰めっぷりが凄い。
谷口ジローの堅めの絵にジャストであっていて、こっちが酸欠になる。体中強ばる。ヤだ。辛い。
だが、それが良い。
ボンヤリとしか覚えていなかった筋が、見ている間にすこしずつ思い出される。
ああ。もともとこの2人って友人じゃなかったっけ?この2人って夫婦じゃなかったっけ?マロリーの遺体って、最後の最後に見つかるんじゃなかったっけ?
しかし、途中で気付く。なにか別のと話が混戦してる・・・
ああ。塀内夏子の「
イカロスの山」だ・・・
おじさんもう記憶が混沌としていて仕方が無い。
しかししかし、実際原作にあった羽生の恋愛パートが端折られてることで話はタイトになる。羽生はストイックになる。物語の鋭さを増す。
そこで失われるモノもあるのだけど、ヒマラヤを登ることの際さが増す。
やっぱり、見てるこちらの息が詰まる。
雪庇は踏み外さないけど、落雪に背筋が震える。滑落に股間が縮み上がる。
天才と己の差は、登頂して死ぬか高山病にやられて下山するかなのだ。
もちろん、後者の俺は後者に感情移入する。
原作のように深町が狂気に取り憑かれないので、むしろ凡人は感情移入しやすくなる。
堀内賢雄と大塚明夫という名優ががっぷり組み合った演技は、恐ろしく引き込む。自分が登っていない山を登らせる。
そして、なんと言っても
実写をも思わせる美麗な山並み!
アニメであることを忘れると同時に、アニメだからこその演出。カメラワーク。ライティング。
パンフの藤津亮太解説は思わず、買ってその場で読み込んでしまうほど。
映画館の大きなスクリーンで見た甲斐のある映画だ。IMAXでもドルビーシネマでもないけど、大きなスクリーンでこそ映える画なのだ。
「
アバター2」の予告編が、
どうしようもなくゲーム映像にしか見えないのとは真反対な画であるからこそのリアリティ。
ああ。これは良い映画だ。