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作品名記述者記述日
ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還唸るバクテリア2004/02/28★★★★

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このタイトルはダブルミーニング、トリプルミーニングである。
たいていの場合、ここでの「王」はアラゴルンを指すだろう。
ゴンドール王の子孫だが、馳男だった「王」。「王」が王である明かしたる剣を持ち帰ったとき、ゴンドールは悪の手から守られ、悪の敗北が決する。
しかし、ここでの「王」は本当にアラゴルンだけだろうか?

たとえば、主人公たるフロドが挙げられる。
彼が指輪を捨てる旅を決意しなければ、この物語は生まれなかったし、ホビットの村に「帰還」することもなかった。
ゴンドールの「王」たるアラゴルンが、「王」の戴冠直後フロドに頭を下げたのはその最たる所である。
もちろん、彼は「王」を名乗るには弱すぎた。
「旅の仲間」たるサムを信じ切れず、最後には指輪の魔力に魅入られ、ゴラム(U・B的には助演男優賞を彼に捧げる)に指を食いちぎられる。
ただ、物語の中でその弱さは許されている。それはフロドがホビットだから。
ホビットとは弱いものであり、人間より劣っている。そういう差別意識が物語には存在しているが、本レヴュの目的はそこにない。ただ、この問題はアングマールの魔王が倒される場面に、カタルシスを生む。
弱いホビットがどんな形であれ指輪を捨て、サウロンを倒した。だから、すべての名誉はフロドに与えられ、こぼれた名誉と大きな友情が他の3人のホビットに与えられた。

ガンダルフにだって「王」の資格はある。
彼はサウロンを倒すために、西方からつかわされた賢者である。
だから、彼はサウロンを倒したことで、エルフと、そしてビルボヤフロドとともに西方へ帰る。
エルフの「王」とサウロンを倒した「王」が、西方に「帰還」するのである。
だから、ガンダルフにも「王」たる資格がある。

しかし、「王」はもう一人いる。
彼は主従関係に偽装された友情の下、大切な人が目的を果たすために、命を懸けて闘う。
抜けているところがあって、彼は大切な人をしばしば危機に追いやるけれど、結果的にそれは大切な人をヒロインに押し上げる。
彼とは誰か?そう、サムだ。
となれば、大切な人が誰かもわかろう。そう、フロドだ。

ゴラムに吹き込まれて、自分を信用してくれなくなったフロドを、サムは助けに行く。
フロドを助けるために、サムは自分の命を顧みずシェロブに挑みかかる。
自分のミスで、シェロブの毒で仮死状態になっていただけのフロドをオークに奪われてしまうが、彼はオークと戦いフロドを救う。
そこにあるのは「勇気」だ。
ヒロイックなポジションにいるのは常にフロドで、サムは健気なヒーローとして何度もスクリーンに登場する。
もっとも特徴的なのは滅びの山でサムが言う台詞だ。

あなたの重荷は担えませんが、あなたを背負うことはできます

これがヒーローの台詞でなければ、「王」の台詞でなければなんだというのだろう?
物語の中で結婚するのは真実「王」たるアラゴルンとサムだけである。
これこそ、サムが「王」である証明だろう。

「王」たちはそれぞれの場所に帰還し、この物語は終わる。
生きて帰りし者たちの物語。それは「指輪」ですら含まれる。
帰るべき場所に帰った者たち、すべてが「王」なのだ。

P.S それにしても、荒俣宏は凄い。

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