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作品名記述者記述日
マリウポリの20日間唸るバクテリア2024/06/07無し

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GWは何気に映画三昧ということで、これにポイント使うのもどうかと思いつつ「マリウポリの20日間」見ました。
この映画に評価とか無理だよ。そういう次元ではない。
見ている間、たぶん、親族の大半はロシアや中国に侵攻されても影響がないだろう田舎に住んでいるから、気にすべきは東京に住む友人たちだし、大切な人だし、札幌に住む友人たちだろう。
そういう彼らが、こういう時にちゃんと生き延びてくれるだろうか?と考える。
なにより、自分がちゃんと生き延びれるか?と考える。
いっそのこと早い内に死んでしまった方がいいんじゃないか?とまで考える。
それぐらいに、この映画は辛い。

ロシアの国連大使は、AP通信の映像だからこそ「フェイクニュース」だと言い切る。
そうか。「フェイクニュース」言われたのは、この人なのか!思う。
たしかに見ている間、そんな感慨もすこしある。
出てきた人たちは、死にゆく子どもたちを名前で呼んだりしない。必ず、年齢で呼んでいた。あるいは「息子」と呼んでいた。
もちろん、そういう映像を使っていることはわかる。あえてなのだろう。
何故か?
おそらく、マウリポリへの侵攻は、歴史の中で予想されうる出来事だったからだ。
だから報道に対して、「報道」という武器を与えるために、子どもが殺されたと告げているのだ。
医者や警察官は撮れという。
撮ってる本人すら信じられないほどに、映像の力を信じて「報道」の武器を与える。
「マスゴミの」の語が罷り通るこの国で、これは衝撃的だ。
恐ろしく冷静で、恐ろしく哀しい事実じゃないかと考える。
劇的であればこそ、人間は劇的な態度を取らないのかもしれない。
おそらく、フェイクニュースに対して、身につけておくべき知識だろう。
ドラマは常に劇的ではない。
劇中、同じぐらい編集が入っているからでもあるけど、誰もが「 ウクライナ人でいたい 」という。
1カ所だけラスト近くで「 ウクライナ軍が空爆している 」との発言も出てくるのだけれど、アレは明らかに情報が行き渡っていないことに関する混乱表現として採用されたのだろう。
実際、パンフを見ると劇中にも引用されていたソ連風プロパガンダが、マリウポリの人々にも行き渡っていたと言及されている。
真顔で「台湾有事なんて起きない」と言う著名人がいる国に生きていると、これも衝撃的だ。
ロシアや中国・北朝鮮の侵攻に、平気で「 トランプが裏切った 」という人も登場しかねない。
プーチンの抱える恐怖は、ウクライナ人の抱える恐怖や嫌悪と同じであり、照り返しにも見える。
同様に、ロシアや中国・北朝鮮が侵攻・占領した際に、日本人で無くなってしまうことは、本能的になんかヤだなとは感じる。
もちろん、それよりも道民・道産子であることや赤平人であることを略奪されてしまうことに、より明確な嫌悪を感じる
腐っても、俺は赤平の人間で煤けてても背負っている気概はある。汚れてるけど。
一般的に「アイデンティティ」と言われるものに、ナショナリズムは結びつけられやすい。努力せずに獲得された特性だからだと考える。
AP通信に所属していても、監督は、ミスティスラフ・チェルノフはウクライナの人間だ。
時々挿話として娘と家族のことが語られる。
大切な人に会いたいなと見ている間、痛切に思う。
やっぱり、いつ会えなくなるかわからないのだ。辛い。
あの合同墓は、死んだあとだとはいえ、尊厳とは?とも感じてしまう。
きっと、自分もああやって葬られるのだ。ウクライナにいたら。
パンフの岡部先生のコラムは本当にグッサリくる。
山崎雅弘のコラムのマリウポリに悲しみに囚われる。

そうそう。日付のカウントはシーケンシャルに進まない。
わかりやすく、日付が進む前に世界の報道映像が流れる。
一度だけ日本語が流れるのだけど、それはフジテレビの三宅アナの声なので、朝ワイドの中で一番下品な(だからあえて見続けてる)めざましテレビの映像だ。
ああ。なんて理不尽な世の中なんだろう。
そして、この理不尽な世界に生まれてしまった赤ん坊に、それでも本当に幸多からんことを。
生まれてしばらくし、泣き声が聞こえた瞬間、こちらが泣きそうになったことは言うまでもない。

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