2024年、最初に見る映画はなにか?と問われれば、それは「
新根室プロレス物語」なのです!
ありがとう。ポレポレ東中野。
映画下手だなぁ。とは思いつつ、下手であることと面白いことは別というか、まぁ、わかってるから
泣きますよね。まったく。
号泣ですよ。
もちろん、知っていることではある。
でも、この涙は日本映画が生き死にだけで泣かせに来るのとは明確に違う。
2019年の新木場は誕生日である。俺の。10/13。
たしか、試合があったと知ったのは終わったあとだった。
2022年の新木場は、行きたいとは思ったが平日だった。
でも、これを見てしまったら、行かなくて良かったと思う。
この物語を知らずに参加しちゃいけないイベントだった。セーフ。
無論、一般的な人よりは知っている。
多少なりともプロレスリテラシーは持ち合わせているつもりだし、アンドレザ・ジャイアントパンダ登場前から新根室プロレスの存在は知っていた。
祭の妖精
祭さんは
北都プロレスのMCをやっていたりもして、北海道のローカルプロレスの所在は把握しているつもりだ。
パンフを読んでたら、北都プロレスは始祖のひとつだった。
けども、そんなことは、結局表面に過ぎないと思い知らされる。
70万で衝動買いしたリングがサムソン宮本の人生を決定的に変えてしまったのだけど、間違いなく、
それ以前にプロレスがサムソンの人生を変えていたわけで、それはたぶん、団体名からして新日本プロレスであることは間違いなく、つまり、ここに流れていたのは
猪木イズムなのだ。
パンフを読んでいたら、この解釈はもちろん間違っていない。
浅草キッドがちゃんと活動しているのなら、ちゃんとここで「男の星座」を描いて欲しい。
そうだよ。
テリー伊藤も含めて、これで「男の星座」を描かないなら、
なんのための浅草キッドか!
閑話休題。
この映画、ヤスケンにナレーションを全面に任せられないのが、すこし弱い。
と思ったら、柴田平美アナは全然
ナレーションする資格があった。ヤだ。ビックリ。不勉強で申し訳ない。
映画下手な理由の一端でもあるのだけど、4コマ挟んでしまうのもひっくるめて、トーンがコントロール仕切れていないと感じた。
それはしかし、映像の古さにも起因する。
なんでフリーカメラマンが、立ち上げ興行という名の
小さな神社祭の映像を撮っているのか?
つか、商工会議所にいるのか?
なんだよ。やはり、
根室は都会じゃないか!と、赤平の人間は思ってしまう。
無論、それは北方領土がそばにあるからだけども、それは負け犬の遠吠えに過ぎない。
自分たちの高校時代の映像なんかは、たとえばVHS-CやHi8で撮っているけれど、もう再生できない。
スマートフォン全盛で、一人一カメラの時代ではない2000年代初頭。本当に、
記録が残っていることは偉大なのだ。
なお、UHB制作だから知ってる名前が出てくるか思ったけど、流石にそれは無かった。
それにつけてもサムソン宮本なのである。
サムソン宮本の存在に集中した映画の構成は、その点において成功しているのだが、ビックリすることにサムソン宮本の存在があったから成立したのであって、上述の通り、映画の腕というか構成・編集によるモノではない。
そう。
八王子の駄菓子屋のオジサンがロック馬鹿なピエロであるのと同様に、根室のおもちゃ屋のオジサンが、死してなお、顔をスクリーンに晒さないと周囲に貫かせるエンタテイナなのである。
マジか。負けてる。
俺はたぶん、ここは負けちゃいけない土俵なんじゃないのか?
カリスマ以前に、そこには逆らうことなぞ思い浮かばせない説得力がある。存在感がある。
負け犬たちのワンスアゲインであることが通奏低音で奏でられる。
俺は高校の学祭で冴えない側だったけど、だからこそ、学校祭全体の支配を実行した。
でも、サムソン宮本はいい歳になってから現実化した。
こういうのは、鬱屈が溜まっていれば溜まっているほど、ネタとして良くなるに決まっている。
コロナ禍とはいえ、冬とはいえ、ゴミ屋敷がスクリーンに映される。
集う人々は、今でも屑なのだ。人間として。
安田顕にナレーションさせるのは、この点において正しい。
パンフで安田顕自身が語っているように、室蘭の人が根室の話するのは海の人として正しい。
そして、北海道から成り上がったのは、大泉洋ではなく安田顕なのだ。
面白いおもちゃ屋のおじさんならどこの地方にでもいるだろうけど、ここまで映像が残っていて、全然カリスマ性があるよう見えないけど、しかし、カリスマであることを誰もが認めるヒーローはサムソン宮本ぐらいしかいない。
ヒーローは存在としてヒーローであると同時に、無闇に誰かの背中を押すのだ。
サムソン宮本はヒーローだ。
図らずも、しかし、能動的に背中を押されたTOMOYAのこれからが楽しみで仕方がない。
ちなみに、この映画のパンフが素晴らしい。
まさかのオフセット印刷。ホンノリ週刊ゴング調の表紙。
あり得ない
サムソン宮本のコメント。
全然クレジットされてないのに大量の写真を提供している堀江ガンツ。
最終的に号泣を誘う鈴木健.txtの名文。
アレ?俺、正月3日目にして、
今年のベストをいろいろクリアしてしまったのでは?
北海道に生まれ育って良かった。
失笑と号泣の二つ我に在り。
あまりにも良かったから、珍しく帰りにポスター写真撮っちゃった。