雑感・レヴュ集 メタセコイア
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作品名記述者記述日
トムとジェリー唸るバクテリア2021/04/30★★★★

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宇多丸は凄い嫌がってたけど、俺は予告編見て、楽しみで仕方がなかった映画「トムとジェリー
最近のアニメ実写ハイブリッド物だと、ピーターラビットにしろピカチュウにしろソニックにしろ、リアリティ寄りのCGに実写を絡めるのが主流ですが、トムジェリって、そもそもリアリティのないアニメだから実写寄りにすると駄目だと思ってたし、予告編はじまった瞬間は、
これ、ハズレだべ
思ったけど、いやいや、ちゃんと古き良きトムジェリをやろうとしてるじゃないか!なんだ。制作陣、わかってるな!!と、すぐに結構乗り気になれたので、見に来たのであります。
んが、両サイドに人が座っててガックリ。
まさかほぼ満席みたいなテイだから、致し方ないのだけど。
といったところで本編です。
期待通りに期待以上。ちょっとビックリ。
いきなりオープニングからアニメ画の鳩がラップしだしたので、前週に見たシン・エヴァ後半で感じた
俺はなにを見ているのか?
が再燃(笑)
単なるドタバタコメディではないと印象づけるのに、あんな見事なオープニングある?
しかも、ニューヨーク舞台の現代劇でラップ・ヒップホップが無いのはありえない。
思わずサントラが欲しくなるぐらい充実したトラック。
そう。
ドタバタコメディと現代ユーモアのハイブリッドが、まさかトムジェリでこんな見事に行われるだなんて!
出だしからネズミがネズミーいじりして、バッドマンパロディや、たぶんアベンジャーズいじりを挟みつつ、白人とインド人のセレブカップルに、おそらくヒスパニックの中間管理職に、黒人のベルボーイに、料理長は感情的なエイジアンで、でも、ヒロインと支配人は白人。
ある種の偏見全面な配役で、出てくる台詞が
偏見は良くない
先生!ジョークのタチが悪いです!
爆笑してしまったではないか。
動物種によって差別しない 」という、ある種真っ当にポリコレ意識したギャグとかアイロニィが絶妙。
あとで確認したら、脚本は「サタデー・ナイト・ライブ」の人だから、なるほど。
しかして、笑いのタイミングが客と合わんのよな。久々に。
笑うことを躊躇うなら劇場にトムジェリなんか来るな!って話だし、そうじゃないなら、「ドや」と笑わせに来たとこだけで爆笑は、なんだか。
ラストの、なんだかんだで皆不幸にしない着地もお見事。
そうなんだよ。
トムジェリって改めて見ると、「仲良くケンカしな」を本当に体現していて、油断すれば趣味の悪いギャグも、ギリギリのとこで踏みとどまってる。
それはもう、純然たる「仲良しこよし」だからこそ。
で、今回最大の問題はリアリティラインが、どう保たれるかだったわけじゃないですか。
結果として、トムジェリだけじゃなく、虫も含めて人間以外の動物すべてアニメという選択が、際どいバランスに留まらせてる最大の要因かと。唯一にして最大の勝ち目。
できることなら、動物みんな喋らない方が良かった気はするけど、象がネズミ嫌がるところは、台詞無いとわからんしなぁ・・・
あえてアニメ画にしているところで、合成であることが言外に強調される。
だからこそ、CG全盛時代に見えにくくなってる「いない存在」を相手にした芝居の巧さ、パントマイムの即妙さを楽しむ映画でもあるなと。
最初しばらく
そこは実写なんだ
とルール解釈する驚きがあったけど、馴染むと心地よいし、であればこそ、ニューヨークの真ん中で象を暴れさせられる。
実際ロケーションはニューヨークじゃないけど。
でも、ニューヨークユニットがクレジットされてたけど。
これがアイディアの勝利じゃなきゃなんなのだ?
しょうもないガジェットがきちんと伏線としてラスト生かされるし、相手の性格を慮ってるからこそ使えるトラップの数々は、いかにもトムジェリ。
象の由来はインドだからでもあるので、
ターバンは巻かないのか?
とあわせて、ポリコレ棒で叩きたいなら叩けるぞ!インド人に言わせたけど。
これがどう派生するかはわからないけど、ある種のメルクマールになる傑作なのではないかと。
個人的には「ロジャー・ラビット」以来の傑作。
「キック・アス」でブレイクしただけあって、クロエ・グレース・モレッツはコメディエンヌとして抜群。
可愛いし面白いし最高じゃないですか。
パッシー・フェランも良かったんだけど、ググっても、なかなか情報が無いのである。
微妙に目が離れてるけど、しかし、実は目力超強いので、灰汁の濃さマシマシにしてる印象。
コメディ映画としては、ケイト・マッキノンみたいに、今後いろいろな役が回ってくるんじゃないかしら。
でも、そんな役者陣よりなにより、スタッフロール一番最初に、ちゃんとトムとジェリーが出てきて、「him self」と書いてるところが敬意ですよ。ホント、良いスタッフ。
この点、まったく日本語版スタッフはわかっていなさ気で残念。
パンフもサイトも「彼ら」が「彼ら自身」であることに1nmも触れていない。アウト

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