第753回 フルムーン

U・B  >いつの間にかミニアルバム(※1)をカウントしていたので、12thアルバムになっちゃったスキップカウズ※2)のアルバム「フルムーン
       (Amazon / Majix / オフィシャル)を喋ります。過去分のカウントとかもシレッと直したよ!
空虹桜>エラいエラい。
U・B  >何故そこで?
空虹桜>過去分直したっていうから、褒めておこうかと
U・B  >いらないよ!そういうの。
空虹桜>そう?まぁいいや。ともかく1曲目は「下北沢にて DEMO 始」で、下北の路上で録った曲。
U・B  >DEMOというわりに、歌詞が良いのです。もともとスキカウ(※3)は歌詞の良いバンドなんだけど安心なはずだ そんな僕ら だっ
       て浮かれていられるんだし まだまだ笑えるぜとか当然のごとく突っ走る つんの目って前のめ
       り 過去はたまに振り返る なぜだろ笑えるな 笑えるぜ 笑えるな※4)とか、ちょっとやそっとじゃ書けない。
空虹桜>このところのU・Bさんを見てると、直で影響受けてるよね。「笑える」ってワンフレーズに
U・B  >イマヤスが唄うから余計にだけど、「笑える」って切実に大事で、笑えるってことは、生きてるし平和だし安心だしっていう。
空虹桜>もしくは狂っちゃったかだけどね。さて、その辺の話はこのあとも出てくるだろうから2曲目「僕は今更しなくていい途方に暮れ
       」はMVもありますと。
U・B  >プロデュースが杉本恭一(※5)な2014年配信三部作(※6 )の3曲目だけど、この曲がやっぱり一番いいかなぁ。
空虹桜>ちょっと曲調がいつもと違うよね。
U・B  >ギターがいつもより前に来てるっていうかね。イントロからキャッチィだし。ちなみに、MVの監督の離婚話
空虹桜>ヒドいなぁ。
U・B  >でも、人の話って、ネタになると思って心に書き留めたりするんでしょ?空虹さんも。(※7
空虹桜もちろん!
U・B  >充分ヒドいですよ。でさ、まぁ、この曲もぬるいビールはそのまま 時は過ぎて それは愛しい※8)っていう、純日
       本的なビール感に基づいた比喩と、ダメな感じが素晴らしいじゃないですか。
空虹桜>ドイツとかはぬるいビールなんだよね。
U・B  >個人的に、黒はぬるい方がおいしいですね。間違いなく。
空虹桜>誰もビール話をリクエストはしてないですから。
U・B  >まぁまぁ。長いタイトルだけど、重要なのはやっぱり今更なわけじゃないですか。
空虹桜>だねぇ。
U・B  >このさ、実は「今更」じゃないと途方に暮れられないダメな感じを、ちゃんと拾えるのはやっぱりイマヤス(※9)だし、そ
       こは頼りになるなぁと。
空虹桜>2曲目にして喋りすぎてる感じなので、サクッと3曲目は「さかあがり
U・B  >テッシー(※10)のギターで変調してから一気にスキカウっぽい曲で、振り向けば気付くだろう 恋はさかあがり※11)って
       いう、いかにもな比喩。
空虹桜>なんっていうか、男の子な比喩だよなぁっていう。
U・B  >おおっ、なんか珍しい指摘。
空虹桜>いっつもアンタが言ってるけど、情けない男の子だから、噛み締めたクチビルは見上げた空の色※12)だったりするわけじ
       ゃない。
U・B  >まぁ、おそらくは鬱血してますわな。
空虹桜>冴えないなぁっていう。
U・B  >でも、それはそれで努力の成果だったりするわけじゃないですか。
空虹桜>でも、その努力って、なんの意味も無くて、単なる自己満足に過ぎないんだよね。その努力で恋は成就しない
U・B  >あいたたた・・・
空虹桜>そゆ意味では、U・Bさん、この曲好きなんだろうなぁと思いました。次、4曲目「想い出ガソリン」で、なんか今までにないタイプのダサ
       いタイトルの曲
U・B  >ダサいっていうな!ダサいって。
空虹桜>曲、全体的にダサいよね。
U・B  >だからダサいっていうな!ダサいって。
空虹桜>超オッサン臭くて、この曲でカクッてきた。
U・B  >大絶賛ですな。
空虹桜>どこをどう聞いたら絶賛に聞こえますか?
U・B  >2013年の配信三部作第1弾だったけど、ありがとう 夢を追いかけるアナタが好きよ 嘘だ 馬鹿野郎※13)の
       ワンフレーズで5億点ですけどね。
空虹桜>まぁ、ウソだもんね。
U・B  >ウソじゃなかったら、頭おかしいですもんね。
空虹桜>アンタが言うなよ。
U・B  >中年バンドマンであればあるほどグッと来る曲だってのはよくわかるんですよ。フラワーカンパニーズってバンドに「深夜高速」(※14)って名曲が
       あるんですけど、この曲はスキカウ版「深夜高速」だと思っていて、つまり、中年バンドマンは高速道路を走ってると名曲
       が浮かぶんです
空虹桜>だから、アタシはダサいって言ってんじゃん。なんだよ。キヨシローとか唄って。(※15
U・B  >斉藤和義(※16)も2013年のアルバムでまた清志郎を唄ってましたからね。仕方ないんですよ。ある意味、呪縛というかなわけで。いつま
       で経ってもビートルズから抜け出せないのとある意味同じ。
空虹桜>自然と出てきちゃうのは仕方ないんだけど、っていいや。こんな話してたらキリが無い。5曲目は「冬の怪獣」で、後悔の白いため息吐いた
       から冬の怪獣なんだよね?きっと。
U・B  >言わずもがななこと聞かないでください。空虹さんらしくない。
空虹桜>問題は怪獣が白い息を吐くか?だよね。
U・B  >待て。おかしい。論点そこじゃない。
空虹桜>そこでしょ?ゴジラのだって白黒映画だから白いけど、実際は熱線なわけだし。
U・B  >それはそうだけど、そのツッコミはややこしい
空虹桜>ツッコミが新しいなぁ。
U・B  >ツッコミのツッコミとか、めんどくさいって。
空虹桜>まぁね。
U・B  >この曲、個人的にクライマックスは大サビ前の2人でいると強がってるクセに 1人になると震えてる 2人でいる
       といきがってるクセに 1人になりゃ振り返ってばかりだ※17)なんですけど、ここでも後悔が出てくるじゃな
       いですか。
空虹桜>なんかあったんだろうね。
U・B  >あったのかもしれないけど、むしろ、その後悔をどう肯定しようか?ってところに問題意識があるんだろうなぁっていう。
空虹桜>でもさ、この手の男って、後悔を肯定されると「そうじゃない!」とか言いたがらない?
U・B  >あいたたた・・・
空虹桜>さて、6曲目は「バンド☆エイド」で、この☆入れちゃうあたりのダサさは、むしろ好ましいんだよなぁ。
U・B  >つかさ、☆を見て、つのだとか画太郎とかユカイとか思っちゃう病気、なんとかなりませんかね?
空虹桜>商標回避のために入れたのはわかるけど、そればかりは、なんとかならないよね。
U・B  >ならないですか。
空虹桜>ならないですね。
U・B  >はぁ・・・今回のアルバムではこの曲が一番好きなんだけど、なんと言っても意味もなく笑えますように 約束が叶いますよ
       うに 貼っておくれよ バンド☆エイドを※18)って、夏に下北の屋根裏で聴いた時に、泣きそうになって、もうね。意味もな
       く笑うなんて、ただのアレな人じゃないですか。
空虹桜>アレ以外のなにものでもないね。
U・B  >でもさ、なんか、あのライヴで聴いた時に、凄い幸福なフレーズに聞こえて、その日のライヴも面白かったから、良かった、俺、
       ちゃんと笑えてるとか思っちゃったわけですよ。
空虹桜>ほぉ。
U・B  >そう感じさせるのは、イマヤスのヴォーカル力の賜物でもあると思うんだけど、歌詞の最後の最後におまじないのように貼るって
       いう切実さみたいなものが、心底ジンと来ちゃうわけですよ。
空虹桜>歳だね。
U・B  >歳ですか?
空虹桜>でしょう。ちなみに、サビのコーラスの重ねた甲斐が説得力に現れてると、アタシは思いますよ。
U・B  >ああ。たしかに。
空虹桜>さてさて、7曲目が「余計なお世話」で、アタシはこのアルバムではこの曲が一番好き。
U・B  >ライヴでも上がる曲ですし。
空虹桜>ホントね、この世には余計なお世話が溢れすぎてるんだよねWeb広告で出てくるのの9割は余計なお
       世話だったりとかするじゃない。
U・B  >ええ。そうですけど、ここで言うことですか?
空虹桜>結局さ、サジェストとかなんとか、新しい発明みたいなツラしてさ、大手を振ってるけど、たしかにほんのちょっとは便利なこともあるかもしれない
       けど、それは田舎のおばさんが見合い斡旋して結婚に到らせるようなもんじゃない。
U・B  >この世にそういうのが実在するのか、よくわからんッスけどね。
空虹桜>ホントさ、もうさ、なに?あの子と結婚すればいいじゃん。とか、お前ら小学生女子か!みたいなさ。
U・B  >えっと・・・空虹さん、なにかありましたか?
空虹桜>いえ。べつに。
U・B  >さいですか。
空虹桜>さいです。ともかくさ、この曲いいと思った自分を見つけて、切々と、自分は世界が嫌いで、唾吐いてるような曲が好きなん
       だなぁと。
U・B  >バカが戦車でやってくる※19)とか?
空虹桜あんた誰?※20)とかね。それはともかく、8曲目が「眠る君のあしもとで」で、そんなところで考えられても困る
U・B  >まぁ、困りますよね。ちなみに、歌詞カードではこの曲にテッシーが参加したことになってる。
空虹桜>だいたいさ、ここで考えてるのって、パッとしないバンドマンが、女と結婚するかどうかでしょ?じゃあ、別れる度胸があるかってい
       うと無くて、ズルズルになるわけじゃん。典型的な共依存っていうか、後戻りできない歳になって破綻するパターンだよ。
U・B  >また凄いこと言いましたね・・・やっぱりなんかあったでしょ?
空虹桜>無いって。っていうか、ゲスいなぁ
U・B  >まぁ、ゲスな人間ですから。
空虹桜>そういう意味では、この曲もゲスい。
U・B  >っていうかね、ゲスじゃない人間はつまんないですよ。
空虹桜>なんて極論。それはともかく、9曲目は「むきだしの心臓
U・B  >実はこの曲も大好きで、「バンド☆エイド」とどっちが良いかで、しばらくずっと悩んでおりました。
空虹桜>まぁ、たいした悩みじゃないよね。
U・B  >人類にとってはたいした悩みじゃないですけど、俺にとってはたいした悩みです
空虹桜>大きく出たなぁ。
U・B  >思いの外ライヴでやらないんだけど、実質ラストに持ってきたりとかを見ると、実はこの曲の大きさを持て余してるというか、
       ンマンとかでしか唄えない曲になってるのかもなぁっていう。
空虹桜>ほぉ。
U・B  >ラストのサビが止められない鼓動と衝動 むきだしの俺のこの心臓 背骨がきしみ 謎の雄叫びをあ
       げる 止められない孤独な妄想 むきだしの俺のこの心臓 ひざを抱えて祈る 俺に何が出来る
       止められない呼吸と行動 むきだしの俺のこの心臓 かすれた声 嘆く俺に誰が夢をくれる※21
       じゃないですか。
空虹桜>だいぶ引用したなぁ。
U・B  >せざるを得ない
空虹桜>アレだよね。2013年の配信三部作は一貫して、バンドマンの憂鬱みたいな感じだよね。
U・B  >っていうかね、このアルバム全体が結成25年でもパッとしないバンドの、でもやるんだよ!なんですよ。
空虹桜>ああ。たしかに。
U・B  >今年はさ、散々言ってるけど、怒髪天の武道館を1月に見てさ(※22)、すくなくとも、日本のロックシーンの端っこでファンをやってる人間として、
       それなりに思うところがあったりするわけじゃ無いですか。
空虹桜>自分の好きなバンドは、軒並みパッとしないとか。
U・B  >否定できないのが厭だ・・・
空虹桜>そこで凹まなくていいから。
U・B  >そうでした。でさ、あの30周年を見て、で、スキカウが25周年だったりとカス売るのを見てると、やっぱり、長くやってるバンドの強さ
       みたいなのを感じるし、なにより、解散の美学は錯覚だと強く思っていて、ウダウダ言ってたとしても、それすら表現の一部と
       して吸収できてナンボみたいのが愛おしいというか、カッコいいんですよ。
空虹桜男の子なんてたいてい残念だっていう。
U・B  >ええ。
空虹桜>残念だ。
U・B  >残念と男の子は=ですからね。残念じゃなければ男の子ではない
空虹桜>男ではなく、男の子なんだよね。
U・B  >漢でもなく、男の子ね
空虹桜>ホント、残念ですよ。最後「下北沢にて DEMO 終」で、ここでも「笑える」を繰り返して唄うイマヤス。
U・B  >そう、だからさ、イマヤスがちょうど、俺らの10コ上なんですよ。1971年生まれ。
空虹桜>まさかのロールモデル問題。
U・B  >えっ?なに?それ?
空虹桜>いや、アタシが勝手に抱えてる問題だから気にしないで。
U・B  >ハァ。じゃ、気にしないで話進めさせていただきますけど、たぶん、40過ぎて、改めて笑えることの大事さに気づいたんだと思うし、笑えない
       現実ばっかじゃないですか。
空虹桜>まぁねぇ。
U・B  >そゆのに面と向かって立ち向かわざるを得ない時に、じゃあ、その現実さえも笑えるかどうかが、実はかなり大事で、今、スキ
       ップカウズってバンドは、この糞みたいな現実の中でバンドとして、オーディエンスを笑顔にすることを本気で考えていて、だって、25年もやって
       るバンドがこんなベーシックなことをひたすら何度も繰り返し唄ってるって、成長してないんじゃなくて、やっぱり、その先にしか唄うべ
       きことが無いってことなんだってのが、ホントに身をもって知るというか、よくわかるアルバムだなぁと。(※23


※1 ミニアルバム:「冬盤〜スイート10ダイヤモンズメロディアス〜」のこと。
※2 スキップカウズ:U・Bがベタ惚れする千葉を代表するバンド。メジャデヴュ後のアルバムはすべて過去に紹介しています。Gu.遠藤肇(リーダ) Vo.今泉泰幸(イマヤス) Ba.小川雄二(ユーヤン) Dr.直井茂雄(シゲ)
※3 スキカウ:スキップカウズの愛称。
※4 拡大部は歌詞より引用。
※5 杉本恭一:LA-PPISCHのギター・ボーカル。今は亡き事務所、db musicでスキップカウズとは先輩後輩の関係。
※6 2014年配信三部作:2014年にmajixにて配信で発売された。順番に「冬の怪獣」「余計なお世話」「僕は今更しなくていい途方に暮れる」
※7 拡大部は歌詞より引用。
※8 拡大部は歌詞より引用。
※9 イマヤス:ヴォーカル今泉泰幸の愛称。
※10 テッシー:1986年に結成された日本のロックバンドUNICORNギタリスト手島いさむの愛称。
※11 拡大部は歌詞より引用。
※12 拡大部は歌詞より引用。
※13 拡大部は歌詞より引用。
※14 フラワーカンパニーズ:1989年に愛知県名古屋市にて結成された日本のロックバンド。 深夜高速:そのフラワーカンパニーズの曲(Amazon / iTS / YouTube
※15 キヨシロー:忌野清志郎。
※16 斉藤和義:a.k.a せっちゃん。日本のシンガーソングライター。2013年発売のアルバム「和義」の1曲目「カーラジオ」のこと。
※17 拡大部は歌詞より引用。
※18 拡大部は歌詞より引用。
※19 バカが戦車でやってくる:脱線3、もしくは、空手バカボンの曲。山田洋次監督作でハナ肇が主演の映画が元ネタ。
※20 あんた誰?:スチャダラパーの2ndアルバム「タワーリング・ナンセンス」収録曲。奇しくも、ハナ肇が出てくる。 谷啓の間違いでした。お詫びして訂正を。(2014/11/11修正)
※21 拡大部は歌詞より引用。
※22 怒髪天:日本のロックバンド。どっこい生きてるJAPANESE R&E(リズム&演歌)バンド。
※23 空虹桜71行。U・B91行(!)で、無論の負け。久々に喋り倒しました。ちなみに、Majixだと1000円で買えるので、Majixで買うのが一番いいと思う。FLAC音源も手に入るし。


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