第914回　成人向け

Ｕ・Ｂ＞いちおなんとか、これ喋りはじめる前に通しで２回聴いた、我らがスキップカウズ（※１）13枚目のアルバムにして、デヴュ20周
　　　　年を記念したアルバム「成人向け」（Amazon / HMV）を喋ります。Amazonのリンクだけだと癪に障るから、アフィリ
　　　　エイトやってるHMV確認したら、アフィリエイトリンク作れないんでやんの！もう!!
空虹桜＞お怒りで。
Ｕ・Ｂ＞別にさ、ここでリンクしたところで１円にもならないのはわかってんだけど、気概の問題じゃん。
空虹桜＞それは気概か？ともかくまずは１曲目「リアル」は、軽く毒が入りつつも、相変わらずのウィットに富んだ歌詞。
Ｕ・Ｂ＞そうなんですよ。サビがさ、だから　ずっと逃げている　だから　ずっと避けているからはじまって窓
　　　　開けろ　リアル（※２）で終わるんですよ。このフレーズワークの妙ね。ちゃんと最後に前を向かせる。
空虹桜＞リアルハ　ムシヲスル（※３）ってところにちゃんと気づいて歌詞にするのが、イマヤス（※４）らしさだよね。
Ｕ・Ｂ＞流石、わかってらっしゃる。
空虹桜＞ファンでもないのに、全アルバム聴かされてるって、おかしいよね。
Ｕ・Ｂ＞だが、それがいい。
空虹桜＞意味わかんないし。２曲目は「ちょうどいい」で、リード曲扱いなのでMV（※５）もある。
Ｕ・Ｂ＞いかにもリーダ（※６）っぽい曲の展開で、「安定のマンネリ」ってフレーズが頭に浮かぶ。
空虹桜＞君は僕に　ちょうどいい（※７）って、サビはわりに失敬だな。って気がするんだけど、全体をちゃんと聴くと、君の
　　　　自由さというか君が君だから僕は好きだよって曲なんだよね。
Ｕ・Ｂ＞ええ。そゆこと平気で歌詞に出来るのがイマヤスじゃないですか。しかも恐ろしいことになんだか　上手い事は言え
　　　　ないけど　多分　伝わりづらいけど（※８）って、充分ウマいこと言ってる上に言うんですよ。ある種の嫌
　　　　がらせ。たしかに、君が君だから好きだって言ってもちゃんと受け取ってくれなかったりし
　　　　ますけど、不器用な言い回しに見せて、超ウマいこと言ってるのって、正直、伝わらない相手が馬鹿なだけじゃな
　　　　いですか。もしくは超照れてる。
空虹桜＞酷いこと言った。馬鹿って言うヤツが馬鹿なんだぞ。
Ｕ・Ｂ＞ええ。ええ。だからこそ最後の件で毎度　ふざけて　すまんけど（※９）って、謝罪が出るわけじゃないですか。実
　　　　は、ここが一番言いたいことな気がするんです。
空虹桜＞流石人生ふざけてる人。
Ｕ・Ｂ＞お褒めいただきありがとうございます。ああ、そうそう。大サビ入りの決めでイマヤスの声だけでなんだかって入るのが超カッ
　　　　コいいのと、コーラスが平岡恵子 a.k.a 桃乃未琴！（※１０）
空虹桜＞３曲目は「ライスカレーブルース」で、誰もが一度はカレーを曲にしないと気が済まないという。
Ｕ・Ｂ＞そうか？わりに評判がいい曲なんだけど、そこまでピンときていなくて、あくまで「カレーライスブルース」でなく、「ライスカレ
　　　　ーブルース」な理由ってなんなんだべなぁ。思って聞いております。
空虹桜＞「ライスカレーブルース」のが語呂はいいよね。
Ｕ・Ｂ＞ええ。たしかにいの一番にそこは思いました。カレー好きだから、カレー食べたら反抗的な腹の音って歌詞はわかるんだけ
　　　　ど、別に帰りたいとは思わない。
空虹桜＞帰ればいいじゃん。
Ｕ・Ｂ＞なんだろ？ライスカレーに思い入れがないんだろうな。今回のアルバムは、こっから曲調がちょっと珍しい感じ
　　　　になっていくので、そこは聴き所ではある。
空虹桜＞そんなに珍しい曲調な感じもしないけど。
Ｕ・Ｂ＞今までもあるメロディラインだけど、そう使ってくるのか！って感じでの珍しさ。
空虹桜＞そうかな？まぁ、いいや。次、４曲目「愛はひだりがわ」は、ゆったりとしたラヴソングに聴こえるんだけど、彼女の
　　　　ことと聴くか、子どものことと聴くかで印象が変わるよね（※１１）
Ｕ・Ｂ＞またコアな聴き方を。
空虹桜＞彼氏の曲と聴くとちょっとムカって来るんだけど、父親の曲として聴くと、まぁ、いいかって気になる。
Ｕ・Ｂ＞言われようが酷いな。個人的には、抱える時は左側で、握る時は右側だから、実感があんま無い。
空虹桜＞知らないよ！アンタの性癖なんて。
Ｕ・Ｂ＞性癖言うな。性癖。あと、個人的には前回のアルバム（※１２）の「むきだしの心臓」以来、イマヤスの「心臓」って単語の使い方
　　　　に敏感になってる気がして、この曲も左側より、この　居心地と　あたたかさと　この　感情と　この
　　　　心臓と（※１３）って件に、過剰な反応をしてしまいました。
空虹桜＞普通、心臓は左側にあるしね。
Ｕ・Ｂ＞そりゃそうなんだけど、40代に入ったイマヤスは頭じゃなくて心臓で考えるようになったんじゃないかなぁっ
　　　　ていう。もともと日本映画学校（※１４）出身なんだから、当然役者としての下地があるんだけど、空虹さん言うところのフィ
　　　　ジカルさが強くなってきたというか、今までは心の比喩が自分の外側にあったんだけど、今は
　　　　肉体表現として比喩されているというか。
空虹桜＞スゲェ。プロっぽい発言。５曲目は「ブービー」で、出だしの鼻の穴に入れた中指は　魔法を呼ぶサイン
　　　　コンクリート　叩き割る　ドドメ色した　憎い奴　トドメを喰らえ（※１５）が素晴らしい。
Ｕ・Ｂ＞絶妙に意味わかるようでわからない感じですよね。「ドドメ」と「トドメ」のライミングのビート感が、若いバンドだったらモッシ
　　　　ュ（※１６）起きそうな曲調に良くあってる。
空虹桜＞あんまよくわかんないけど、たしかにフェスで聴こえてきそうなメロディな感じがする。
Ｕ・Ｂ＞そうなんですよ。一巡目で一番ビックリしたのがこの曲で、ブレイクの入れ方とか今っぽいんですよ。全体的に、今
　　　　回意図してブレイクを入れてきてる感じなんだけど、とくにレンガ色した　眩しい奴　銀河を喰らえ（※１７）
　　　　なんて、かなりキテる歌詞からのブレイクなんてたまらんのですよ。
空虹桜＞そこで銀河か！っていう。引き続き、６曲目「だもの」も君の根性が　かなり　ねじ曲がって　いようと
　　　　も　君の中で　僕を　ナメくさっていようとも（※１８）という、いかにもイマヤスっぽい出だし。
Ｕ・Ｂ＞サビが圧倒的にやられたよ　変になってるよ　そうさ　それが　恋だもの　それが　恋だ
　　　　もの（※１９）ですからね。もう、俺の大好物なんだけど、これを四十過ぎた子持ちが今さら唄うかね！
　　　　っていう。
空虹桜＞まったくブレがない。
Ｕ・Ｂ＞たぶん、誰かに聴かせたら「同じような曲じゃない？」とか言われる感じなんですよ。それはそうで、イントロド
　　　　ンでかかっても答えられる気がしないんだけど、でも大事なことって、同じようでちゃんと違うこと
　　　　だと思うんです。
空虹桜＞ちゃんと違う？
Ｕ・Ｂ＞この曲だと、２番で君が　この先どっかで　イケすかねえ奴に抱かれても　君が　夢見る事が
　　　　世間を　ナメくさっていようとも　首を縦に振るよ（※２０）なんですよ。「夢見ること」が出てくるの
　　　　やった！感って、今も夢見てやってるバンドが唄うこそだと思うんです。
空虹桜＞呆れるほどみっともないかもしれないけれど、夢見ることを止められない。
Ｕ・Ｂ＞ええ。じゃなきゃ売れないまま20年もやってられないですよ。ピーズだってコレクターズだって武道館やった（※２１）けど、ス
　　　　キカウは武道館になんて、ちっとも到らないわけですから。
空虹桜＞その言い回しは切ないなぁ。７曲目は「上書き」で、さっきの話だと、この曲もブレイクがいい曲。
Ｕ・Ｂ＞そうッスね。んで、このアルバムで一番この曲が好き。スキカウってバンドが本当に演奏の上手いバンドだ
　　　　ってよくわかるし、手拍子もしたいし、なによりやっぱりサビがすんばらしい。
空虹桜＞上書きした君と　落書きされた僕（※２２）って、過去最高に好きって文脈ではあるけど、むしろ、過去最高
　　　　にいい曲書くから過去最高のレスポンスをくださいって、決意というかアジテーションに汲み取れる。
Ｕ・Ｂ＞ああ。いいですね。その解釈。あと、何故に　なにゆえに　肯定してしまった（※２３）っていう、ワンフレー
　　　　ズが凄い身につまされる。
空虹桜＞ごめん、アンタには興味が無い。８曲目が「遠回り」で、やっぱり左手が空いてるイマヤス。
Ｕ・Ｂ＞えっと・・・ああ、そうですね。同じアルバムで２回も左手空けとく必要は無いですね。たしかに。うるせぇよ！
空虹桜＞まさかのノリツッコミ。
Ｕ・Ｂ＞ええ。とりあえず、遠回りして帰れるのは今日で最後かもしれないのに、拒否るなよ！
空虹桜＞知らないよ。なんだよさっきから。
Ｕ・Ｂ＞めんどくさいのわかってて、めんどくさい女口説いてる俺が悪いんですよ。
空虹桜＞だから知らないって。
Ｕ・Ｂ＞もう、今の俺にジャストすぎてしんどいです。この曲。１人ならさ　近道だろ？　２人だからの　遠回り
　　　　（※２４）って、正しくなんですよ。お前の家がそこなんだから、隣りにいれるんだったら、遠回りしたって
　　　　降りるじゃんって話なわけですよ。なにかしたいはしたいけど、させてもらえるとは思ってないですよ。そゆ
　　　　女じゃないのわかってるから口説いてるわけだし、結果的に失敗したとしても、その記憶は無駄じゃないんですよ。
空虹桜＞五月蠅い。
Ｕ・Ｂ＞ごめんなさい。とりあえずもう、この曲はぐっさり刺さるんでしんどいです。
空虹桜＞その手の話は来週の忘年会で話してください。ラスト、９曲目はちょっとパーティソングっぽさもある「正解」
Ｕ・Ｂ＞この報われない感ったら！
空虹桜＞残念だよね。
Ｕ・Ｂ＞でも、その残念さが好き。
空虹桜＞ホント残念だ。正解なんて無いもんね。
Ｕ・Ｂ＞正直な話、若干、「スルメ男」（※２５）に食傷気味なので、この曲で盛り上がるみたいなライヴ編成に変
　　　　わってくるといいんじゃないかと思います。
空虹桜＞マンネリ肯定していたはずが、食傷気味とか。
Ｕ・Ｂ＞まぁね。とはいえさ、この曲だって充分スキカウ臭いわけじゃないですか。
空虹桜＞マンネリの一環ではある。
Ｕ・Ｂ＞もう　誰でもいいから叶えておくれよ　小さすぎる夢でもいい　叶えておくれ　シカト
　　　　は　無しだ（※２６）って、もう28年バンドやってるヤツらしか唄っちゃ駄目じゃないですか。
空虹桜＞最後はやるしかないと叫ぶしかない。
Ｕ・Ｂ＞正直、みっともない切実さだけど、唄うことでしか、音楽にすることでしか表明できないわけじゃないですか。
空虹桜＞作り手である以上はね。そうじゃないとただの愚痴だし。
Ｕ・Ｂ＞愚痴るのは必要悪だけど、愚痴るだけで満足してたら作り手である必要ないじゃないですか。
空虹桜＞本質的には、作り手のプライドの問題だし、なにを持って作り手であり続けるかだよね。ただ生産するだけで作り手
　　　　と名乗って良いのか？
Ｕ・Ｂ＞そうそう。生産するだけの消費者ではないのか？っていうのは、しっかり向き合うべき問題であって、向き合
　　　　ってるバンドだからこそ長続きしてるんだと信じる。
空虹桜＞途中で立ち止まったとしても、看板を下ろすわけにはいかない理由だよね。
Ｕ・Ｂ＞ぶっちゃけた話、看板下ろす方が楽じゃないですか。
空虹桜＞でも、諦められないというか、吐き出さざるを得ない。
Ｕ・Ｂ＞したっけ、どうしたって因果を考えざるを得なくなるから、余計にこんな曲も書かなきゃいけなくなる。
空虹桜＞因果だよねぇ。
Ｕ・Ｂ＞ホント。デヴュした時に産まれた子どもが成人だって、イントロでイマヤスが言ってるけど、結成からカウントした
　　　　ら、もうアラサーなわけじゃん。そんな子らが。
空虹桜＞怖いよねぇ。
Ｕ・Ｂ＞超怖い。けど、時間の流れには逆らえない。
空虹桜＞逆らえないけど、逆らえないからこそ、いいことだってある。
Ｕ・Ｂ＞こんなアルバムだって聴けるし、また有吉（※２７）が帯に軽い毒を吐いてくれるし、白根ゆたんぽ先生（※２８）のジャケをまた
　　　　見れる。
空虹桜＞もう頑張るしかないよね。
Ｕ・Ｂ＞んだ。しゃーないもん。好きなもんは好きだし、そばにいたいのはそばにいたいし、聴いてたいのは聴いてたいですよ。どんなに
　　　　カッコつけたって、どんなに理論武装したって、思っちゃったり感じちゃったりしたもんは、やっぱし
　　　　ゃーないんですよ。悟りっちゃ悟りなんだけど、否定してどうなるもんでもないんだから受け入れよ
　　　　うって話で、まだ、若い子には理解できないかもしれないから、「成人向け」なのも仕方ないよね！っていう。
　　　　（※２９）

※１ スキップカウズ：Ｕ・Ｂがベタ惚れする千葉を代表するバンド。メジャデヴュ後のアルバムはすべて過去に紹介しています。Gu.遠藤肇（リーダ） Vo.今泉泰幸（イマヤス） Ba.小川雄二（ユーヤン） Dr.直井茂雄（シゲ）なお、ユーヤンは活動休止中のため、レコーディングはIn the Soupの草場敬普が演奏している。
※２ 拡大部は歌詞より引用。
※３ 拡大部は歌詞より引用。
※４ イマヤス：ヴォーカル今泉泰幸の愛称。
※５ MV：ミュージックの略。以下は「ちょうどいい」のMV。最後にユーヤンのナレーションが入るのは、ファン受けいいだろうけど、初見の人にはなんのことやら。

※６ リーダ：ギター遠藤肇のこと。
※７ 拡大部は歌詞より引用。
※８ 拡大部は歌詞より引用。
※９ 拡大部は歌詞より引用。
※１０ 平岡恵子 a.k.a 桃乃未琴：ご存じ名越由貴夫の奥さんこと、日本のシンガソングライタ。ナイナイのANNから桃乃未琴のANNは、寝落ちしながらの黄金パターンだった。
※１１ イマヤスが最近、結婚＆子ども誕生を発表したことを受けての発言。
※１２ 前回のアルバム：12thアルバム「フルムーン」（Amazon / Majix / オフィシャル）のこと。クロスフェーダでは第753回でダベっております。
※１３ 拡大部は歌詞より引用。
※１４ 日本映画学校：現、日本映画大学のこと。映画監督今村昌平が開学した映画監督、脚本家、俳優を始めとして映画スタッフを多数輩出している学校。
※１５ 拡大部は歌詞より引用。
※１６ モッシュ：主にロック・コンサートにおいて見られる現象の一つ。興奮した観客が密集した状態で無秩序に体をぶつけあうこと（以上、Wikipediaからのコピペ）
※１７ 拡大部は歌詞より引用。
※１８ 拡大部は歌詞より引用。
※１９ 拡大部は歌詞より引用。
※２０ 拡大部は歌詞より引用。
※２１ ピーズ：日本のロックバンド、Theピーズのこと。　コレクターズ：日本のロックバンド、THE COLLECTORSのこと。　武道館：格闘技の聖地であり、ロックバンドの夢の場所であり、玉ねぎな日本武道館のこと。
※２２ 拡大部は歌詞より引用。
※２３ 拡大部は歌詞より引用。
※２４ 拡大部は歌詞より引用。
※２５ スルメ男：スキップカウズのライヴ必須曲。よっちゃんイカが飛び交うこと、および、ファンがちゃんとイカを持ち帰ることで有名。

※２６ 拡大部は歌詞より引用。
※２７ 有吉：元猿岩石の有吉弘行のこと。スキップカウズとは、広島暗黒時代からの付き合い。
※２８ 白根ゆたんぽ：日本のイラストレータ。ちょいエロな絵を描かせると世界一。イマヤスがANNをやっていた頃からの付き合い。
※２９ 空虹桜４９行。Ｕ・Ｂ８５行（！）で、無論俺の負け。前回より喋ってないのは、聴き込んだ時間が違うから！でも、やっぱり、いいアルバム!!大好きスキップカウズ！！！