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空虹桜> 出だしは先月からの引き続きですけども、HALCALI(※1)の1stアルバム「ハルカリベーコン」(iTS / Amazon / HMV)の話を今さらながらにやります。何故ならば、当時はCDで発売されなかったからです。ファッキンCCCD!!!(※2)
U・B> 実際問題、大半知ってる曲だから、そこまで肩に力を入れずに話しても良いんですけどね。
空虹桜> それはまぁそうなんだけど、この流行りに乗っかるのもなんだかなぁって気はするし、CCCDとか今の子が知らない昔話もしなきゃいけないじゃない。
U・B> 何度もその辺は擦ってるから、今さらなにを学び直しますか?
空虹桜> 今の子たちはストリーミングしか知らないから、コピーしちゃいけないとか意味がわかんないとは思うんだよね。
U・B> 古代人的には、コピーできる物はコピーしておかないと、何時手に入らなくなるかわからなくなる!と思ってる。
空虹桜> 実際、聴けない音楽いっぱい知ってるしね。本だって。しかして、今の子たちのおかげでまさかの再発。
U・B> TikTokでバズる(※3)って再帰性が極めて低いと思うんだけど、今の子たちはどうやって同じ曲聴いてるんだべ?とか思うんですよね。
空虹桜> 甥っ子に訊いとけよ。
U・B> 正論。たぶん、別に同じ動画で聞かないだろうし、なんだったら曲名だって興味が無くて、ただそのフレーズだけを使いたいから検索してるみたいなことになる。
空虹桜> そこにはコピーはなくて、再参照が発生してるわけだから、ある意味では極めて健全なんだよね。
U・B> 再参照!たしかにそれは言えてる。コピーの無い世界を目指してはいた。
空虹桜> それを力で規制するのがCCCDだし、ダビング10(※4)とか未だにあるんだけど、今はコピーそのものじゃなくて、要素を拾っていくAIへの嫌悪の方が強くなってく。
U・B> サンプリングの時代に要素拾われるの嫌うって本末転倒ですよね。
空虹桜> 気持ちはわかるんだけどね。ただ、サンプリングされることが偉大だし、サンプリングされたとて、自分はなにも脅かされないっていう自信というか、自負が無いならモノ作っちゃ駄目だと思うけどね。
U・B> さて本題。1曲目が「intro. HALCALI BACON」で、リアルJCの巫山戯てる感が最高なんだけど、この歳になって聞くとキャッキャしてるのを眺めてるオジサン側なんだ。俺。みたいな。
空虹桜> なにをキモいこと。とはいえ、この意味の無いトラックではじまるのが、今となっては凄いオールドスクールで大好きだわぁ。とか思ってしまった。
U・B> そもそも、この手のちょっと軽いトラックが、2020年代の若い子が聞くヒップホップであんまり無いですよね。
空虹桜> 無いねぇ。無駄に重くて、あんまり聴いてらんないんだよね。アタシは。
U・B> 完全に老害発言。ただ、このアルバム全編通してこの感じを貫いてるのは、やっぱり1stアルバムらしさかなぁとも思ったりします。で、2曲目が名曲「タンデム」
空虹桜> 改めて聞くと、ラップ巧いよね。
U・B> もちろん作詞がRYO-Zだし(※5)、今の中学生だったらさらに巧い子いっぱいいるだろうけど、2002年から2003年の中学生がこのラップは抜群に巧い。
空虹桜> そうね。たぶん巧い子はいっぱいいるんだろうね。ただ、改めてこの曲聴いてて思ったのは、リリックもトラックも、巧く聴こえるようにできてるなぁっていう。
U・B> どゆこと?
空虹桜> まずはトラックのビートがハッキリしてるじゃない。なんでリズムキープしやすい。んで、そこにあわせてちゃんと韻を置いてるし、Aメロの「ハラハラ二人きりのシートに またいだんなら まぁしっくり ビックリ体験ビーツ大回転 はたいたマシーンの尻ピンポイント」(※6)って、脚韻だけじゃなく頭韻とか子音をあわせてて、リズム感が出やすいんだよね。
U・B> カタカナ多めでポップさもあるし。
空虹桜> 中学生に「タンデム」を唄わせるちょっと大人びた感と、ポップさに、でもしっかりヒップホップ要素をまぶして、オシャに仕上げたらヒットするに決まってんじゃんね。っていう。
U・B> で、3曲目が「ギリギリ・サーフライダー」で、あの頃も思ったけど、改めて聴いて都会!って感じが凄いした。
空虹桜> ああ。北海道のド田舎者的には「TVの中の東京感」っていうか?
U・B> そうそう。そゆのとは1nmも縁遠い山の中の民としては、これぐらいの軽さというかユルさで、一夏のヴァケーションとかしちゃうわけですよね。いいな。青春!みたいな、よくわからない劣情を感じたりもする。
空虹桜> だからキモいって。オッサン。
U・B> あとアレですよね。結構、聞き取りにくいというか、なに言ってるかわからない歌詞じゃないですか。
空虹桜> うん。まぁ、狙い通りではあるよね。意味のあることはラップしない。
U・B> 2番の歌詞だけど「ダイナマイトな トゥナイザナイト 止まんないターンテーボー サーフライド 夢のラフライフ 邪魔タフガイ デンジャー 訳して危ないゼ!」(※7)って、ホントの本気でなにも言ってないが過ぎる。
空虹桜> だが、それがいい。さっきも言ったけど、アタシの好きなオールドスクールってこんな感じなんだよね。やっぱり。それはもちろん4曲目「嗚呼ハルカリセンセーション」がスチャダラパー(※8)プロデュースが象徴的で、意味がないどころの騒ぎじゃなくなるっていう。
U・B> 空虹さん、ホントこういうの隙ですよね。自分では作らないクセに。
空虹桜> どっちかって言うと、自分で作れないからこそ大好き。そもそもさ、「世界のみなさんアニョハセヨ 五輪五輪 SEOUL ケチャンナヨ 眠んなよ このムカシバナシ」言ったあとで「雑誌にMD コスメおでん 毎日5%はなにかと納税 重税に耐える中高生 有名税もやや増税」(※9)ですからね。このしょうもないことにさりげなく紛れ込む真面目さみたいのが、本当にたまらない。
U・B> 2番も「岡ちゃんトルシエジーコジーコ ロベカルロナウドフィーゴフィーゴ レアルなコトバとビートビート」(※10)とか、2026年に再発されるとかちっとも想定していないリリックですもんね。
空虹桜> ジーコとフィーゴとビートで踏むとか、ホント酷い。
U・B> そっからギャップ全開の5曲目「おつかれSUMMER」が何故か海外でリバイバルヒットしたので、今回再発されたわけですが、そりゃ信頼の田中知之(FPM)ですからね(※11)
空虹桜> 海外で受けないはずがない。
U・B> 「トロピカール! 夜のbeach!」(※12)からのメロディ展開が本当にエロくて、それにあわせて歌詞もJKに唄わせるのはアウトじゃね?みたいな話になるわけだけど、しかし、リアリティもある気がする。
空虹桜> 書いてるのFPMだけどね。「ハッとしてグッときてあなたに パットの胸躍る~」(※13)とか、こら!オッサン!!!みたいな感じもありつつ、このリズム感は日本語らしくていいんだろうね。
U・B> まぁ、英語由来のカタカナ語ですけどね。ここまでで、ホントに大人が子どもで遊んでる感が、ある意味酷くて最高なんですけど、さらに6曲目が「ハルカリズム "CANDY HEARTS"」がKOHEI JAPANプロデュース(※14)
空虹桜> 当時はよく知んなかったんだけど、ここでKOHEI JAPANって流れもなかなかだよね。そもそもリップはFGクルー(※15)だから、むしろスチャ参加してる方が珍しいんだよね。
U・B> たしかに今なら、多少知った口きける程度には知ってますわな。
空虹桜> リアタイで喋んなくて良かった!ウチら勝ち組。イエー!
U・B> なんだそのノリ。KOHEI JAPANがガッツリプロデュースした曲って、そんなに無いんだけど、何故かWikipediaのKOHEI JAPANのページにはこの曲が出ていないという。
空虹桜> いらない情報。結局のところ、KOHEI JAPANにしろ、オールドスクーラーだから耳心地が良い。
U・B> 元ネタそんな詳しくないけど、トラックもなんかのサンプリングというかですよね。
空虹桜> アタシも詳しくないけど、まんまでは無いんじゃないかなぁ。とりあえずさ、自己紹介ラップでもあるんだけど「さぁさ これから パンパン鳴らせ手拍子 軽々またがる魔法のホウキ 悠々気分はハリポタ 聴きなハルカリズム さぁ行こうか!」(※16)みたいなカタカナの並びが良いんだよね。
U・B> 今のラップの子だったら、平仮名を使えとか言いそう。
空虹桜> なんだその偏見。つか、だったらオートチューン使うなよ!(※17)とも思うけど、それはともかく、このカタカナみが「Boomin' Boomin' Boomin' System が奏でるBEATに耳釘付け」や「Yes, Yes, Y'all!さぁカウントダウン 3.2.1!」(※18)につながってくあたり、だいぶ好き。
U・B> 声ネタとかもオールドスクールというか、我々がラップ聴くようになったときに多かった印象。
空虹桜> 結局さ、なにを最初に聴いたのか?っていう刷り込みって大きいんだよね。今の子らがBAD HOPから入ったなら、そりゃBAD HOP的なのが好きになるだろうし、Creepy Nutsから入ったなら、そりゃCreepy Nuts的なのが好きになるだろうしね。っていう(※19)
U・B> 動物的本能っちゃ本能なんですよね。さて、7曲目「Conversation of a mystery」はHALCALIのフリートークっぽいインタールードで、8曲目が「Peek-A-Boo」がポップな、どっちも2分無い曲。
空虹桜> 「Peek-A-Boo」は1曲目というか出囃子に向いてる感じがする。
U・B> 出囃子!たしかに。9曲目が「Hello, Hello, Alone」は打って変わって穏やかだと思ったらNathalie Wiseプロデュース(※20)
空虹桜> 恐るべきBIKKE節(※21)
U・B> すっかり忘れて聴いてたら、「アレ?BIKKEっぺぇリリックだなぁ」思いましたよ。
空虹桜> ワードチョイスはもちろんだけど、「でも、分かっても 分かっても」とか「せめて、せめて、夕立ちでも降ってくれれば」とか「あいまいな季節の中、飛び起きても 何も起きず、夢からさめても、さめやらぬ、」(※22)みたいな言葉の並べ方がいかにもBIKKEだよね。
U・B> ですね。高野寛(※23)のメロディメイクもBIKKEのノスタルジックを強調してるというか、HALCALIが本来持ってる「夏休み感」をあぶり出してる。
空虹桜> そうね。そゆ意味では、このアルバム全般的に夏休み感が出てる。
U・B> ああ。初期HALCALIは「オッサンたちの憧れ投影」みたいな感じありますからね。10曲目が「スタイリースタイリー」
空虹桜> テーマはボディの話だけど、2番の「やっぱりブリちゃん アギちゃん スタイルいい ミッシーはRAPのスタイルがいい JapaneseならAムロ Aユ 女優ならジェームスじゃないほうのキャメロン ライツ キャメラ アクションの勝負」(※24)が最高すぎて辛い。
U・B> あったま悪くて良いですよね。
空虹桜> メインテーマはさ、今だと違う意味で解釈しうるので、この曲自体の価値は20年経って変わったんじゃないかな?とも思うんだけど、このフレージングは気持ち良さというか、楽しさだけを口にしてる気がするんだよね。
U・B> ああ。「楽しさだけ」って、いかにもラップっぽい。
空虹桜> 本来フリースタイルとかもそうだとは思うんだけど、今の日本語ラップシーンって、ちょっと必死すぎて辛いなとは思うんだけど、でも必死さを揶揄しちゃいけないって微妙なとこでもある。
U・B> すくなくとも揶揄するのは老害の仕事ですよ。
空虹桜> だよねぇ・・・
U・B> さて、11曲目がみんな大好き「エレクトリック先生」ですけど、曲名が凄い電気っぽい(※25)
空虹桜> でも、「マイハート エルニーニョ テキストも テストも」(※26)みたいな韻の気持ち良さのが強い曲だとは思う。
U・B> そうですね。「学園騒然 恋のローテーション エレクトリック先生」(※27)なんて、「ローテーション」と「先生」で踏めるとか思いもしないとこですし。
空虹桜> メロディがあるラップだからこそ、韻が踏めてるように聴こえる。
U・B> 音楽のマジックですわな。最後、12曲目は「続・真夜中のグランド」で、まさかのもりばやしみほ!(※28)
空虹桜> よく考えると、1stアルバムから唄モノが入ってて、実は唄モノが良いって今復習してるからこそ、面白いよね。
U・B> 無論、もりばやしみほのポップさがあるからこそでもある。
空虹桜> ウチらみたいな田舎者だとさ、そもそも「ひそめく 25時の校庭 2人で こっそり しのびこもう」(※29)みたいなドキドキってないじゃない。
U・B> 高校はあったけど、小学中学は校門なんて存在しないようなとこでした。
空虹桜> 小・中は道のひとつみたいなもんだもんね。敷地が。
U・B> そもそも夏祭りの会場でしたからね(※30)って、そんなローカルトークはどうでもいいんですよ。まとめてください。
空虹桜> なにってさ、2003年のアルバムなわけじゃない。これ。23年前。
U・B> 23年前!怖い!!!
空虹桜> 怖いんだけど、23年前のアルバムがどういうわけかディグられたのだけど、23年程度でレアグルーヴになる。って、現実を目の前にしてるという言い方も出来るわけじゃん。
U・B> まぢか!!!たしかに。
空虹桜> こうして歴史は作られるというか、こうして改竄される歴史はむしろ肯定すべきで、アタシは全力で受け入れるよ。
※1^ HALCALI:HALCAとYUCALIからなるラップユニット。2012年に活動休止し、その後結婚・出産を経て、2025年頃からすこしずつ活動再開しそうなふんいき。
※2^ CCCD:ボクらがアレだけコピーコントロールCDを忌み嫌ったのは、コピーできない殻もあるけど、なによりCDではないからで、嘘吐きは嫌いだよという話(自滅)
※3^ TikTokでバズる:Wikiepdaiによると、2025年12月時点で、TikTokにおける楽曲の総再生回数は50億回を突破してるらしい。しゅごい。
※4^ ダビング10:日本のデジタルテレビ放送の著作権保護のためのコピーガードの一種。そうこうしてたらストリーミングに乗っ取られてフィジカルが売れなくなってBlu-rayが廃止みたいな。ある種の自滅。
※5^ RYO-Z:RIP SLYMEのメインMC。同じくRIP SLYMEのDJ FUMIYAとHALCALIのプロデュースユニット「O・T・F(オシャレ・トラック・ファクトリー)」を組んでいた。
※6^ 直近の鉤括弧は歌詞からの引用。
※7^ 直近の鉤括弧は歌詞からの引用。
※8^ スチャダラパー:空虹さんが大好きな日本のヒップホップユニット。過去に大量のアルバムをすべてレビューしています。
※9^ 直近の鉤括弧は歌詞からの引用。
※10^ 直近の鉤括弧は歌詞からの引用。
※11^ 田中知之(FPM):a.k.a Fantastic Plastic Machine。日本の音楽プロデューサ、リミキサ、DJ、作曲家、編曲家。東京2020オリンピック開会式オープニング音楽を約30時間、徹夜で仕上げたことで有名。
※12^ 直近の鉤括弧は歌詞からの引用。
※13^ 直近の鉤括弧は歌詞からの引用。
※14^ KOHEI JAPAN:RHYMESTERのMummy-Dの弟こと、坂間広平。あるいはMELLOW YELLOWの中の人。後述のWikipediはこちら。
※15^ FGクルー:RHYMESTER、EAST END、RIP SLYME、KICK THE CAN CREW、MELLOW YELLOWを中心としたヒップホップ・コミュニティであるFUNKY GRAMMAR UNITの略がFG。
※16^ 直近の鉤括弧は歌詞からの引用。
※17^ オートチューン:アンタレス・オーディオ・テクノロジーズ社が開発・販売する、楽器・ボーカル用音程補正用ソフトウェア。
※18^ 直近の鉤括弧は歌詞からの引用。
※19^ BAD HOP:川崎市を拠点に活動していた8人組ヒップホップ・クルー。2024/2/19に東京ドームライヴで解散。 Creepy Nuts:DJ松永とR-指定による日本のヒップホップユニット。
※20^ Nathalie Wise:BIKKEと斉藤哲也、高野寛の3人によるバンド。U・Bが一番再生しているアルバムが実はNathalie Wiseの「raise hands high」
※21^ BIKKE:TOKYO No.1 SOUL SETのMC。作詞も担当している。
※22^ 直近の鉤括弧は歌詞からの引用。
※23^ 高野寛:日本のシンガソングライタ。高橋幸宏の後継者の1人。
※24^ 直近の鉤括弧は歌詞からの引用。
※25^ 電気:みんな大好き電気グルーヴの愛称。
※26^ 直近の鉤括弧は歌詞からの引用。
※27^ 直近の鉤括弧は歌詞からの引用。
※28^ もりばやしみほ:hi-posiの中の人。弊サイト的には朝日美穂、川本真琴とのコーラスユニット「ミホミホマコト」の中の人。
※29^ 直近の鉤括弧は歌詞からの引用。
※30^ そもそも夏祭りの会場でしたからね:とっくの昔に廃校になっており、敷地は生協になってしまったのだが。