雑感・レヴュ集 メタセコイア
洋画

作品名記述者記述日
オッペンハイマー唸るバクテリア2024/05/24★★★★★

本文中のリンク先には、アフィリエイトを含むことがあります。ほぼお金になってないですけど。

IMAXで見るためにTOHOシネマズ新宿で「オッペンハイマー」見ました。
関東に住んでたら池袋シネマサンシャインのIMAXレーザーGTじゃないと意味が無いのはわかってるけど、そんなチケット争奪戦、最初から諦めてたよ!
それはともかく疲れた。
この疲れは好ましくなくて、正直しんどい。
ずっと追い詰めてくるのだ。
映像が。音楽が。呼吸音が。足を踏み叩く音が。
2回見たいとは思わない。
この感慨は「パラサイト 半地下の家族」以来。
けど、たぶん「パラサイト」と違って、いつかきっともう1回見る。
この疲れや不愉快さ、苦しさはIMAXだからこそでもあるのだけど、あの音はIMAXだからだし、ドルビーシネマだったらもっと来た気がするので、IMAXにしといて良かったかと。
そうじゃなく、悔しいかな、やっぱり日本人なんだなぁと。
「原爆」という超暴力の前に、実験が成功するとわかっているのにドキドキと罪悪感を抱く。
あの、広島の原爆資料館で絶望的なまでの憂鬱さを喰らわせられた、あの爆弾。
息が詰まる。苦しい。
パンフレットの泰早穂子のレヴュは、この意味で本当に素晴らしい。
このレヴュのためにパンフは買う価値がある。
そしてそこから、まさかのリーガルサスペンス。
こんがらがった糸が解かれている時に、いや、オッペンハイマー as キャリアン・マーフィーは水爆を拒否してたんだから誠実じゃん!とか、考えてしまう。最終的に味方が出てきて良かったと思ってしまう。
けれど、彼がロスアラモスを率いていたのだ。
主人公への肯定的な感情移入は原爆の肯定につながっている気がしてしまう。
苦しい。
もちろん、苦しさの根底にあるのは大量の日本人の死を自分たちの権力闘争に使う政治家だし、極めてポジション的な選択でオッペンハイマーにスパイ容疑をかけ、セキュリティ・クリアランスを剥奪したケネディだったり、コンプレックスを露わに水爆を推したストローズ as ロバート・ダウニー・Jr.や、トルーマンの政治家らしいプライドの見せ方に対する嫌悪感は否定できない。
本当に政治家嫌い。
極めてアメリカ的でもあるのだけど、そのアメリカらしさは嫌いだ。
研究者として研究したい欲求はわかるのだけど、研究者が政治家にならざるを得ないのは悔しくて仕方がない。
無邪気に軍服を着たオッペンハイマーに釘を刺す科学者達の素朴な嫌悪感に同意する
それは、ローレンス・リバモア研究所のローレンス as ジョシュ・ハーネットだとか、「水爆の父」であるエドワード・テラー as ベニー・サフディがオッペンハイマーと対立してたり、原子模型のボーア as ケネス・ブラナーが出てくるなど、ちょっとした物理学者アヴェンジャーズである。
そりゃ、政治に嫌悪するよね。
ストローズとボーアの存在感は、この映画に説得力を与えているなと。
あと、パンフの森直人レヴュを読むまで、オッペンハイマーのパートが「核分裂」で、ストローズのパートが「核融合」だと理解していなかった。
もうちょっといくつかのパートがあるんだと思い込んでいたので、あのパートの記載はなんだったのか?と、素朴に思っていた。
ちょっと解釈が弱いな。自分。

それはそれとして、ちょいちょい出てくるユーモアみたいなところで笑ってるのは相変わらずワタクシだけでした。お前らちゃんと笑え
あと、セックスシーンがたいがい騎乗位なのは、オッペンハイマーの他者への興味のなさというか、射精したいだけ感が出てて、いいなぁ。ちょいちょいやれる女が出てくる男は(不適切発言)
ちなみに、こんな露骨なセックスシーンがあると思わずビックリしました。だからR15なのか。
でも、ジーン・タトロック as フローレンス・ピューのおっぱい!フローレンス・ピューのおっぱい!
よく考えたらちょいちょい脱いではいるのだけど、日本の公開時系列としては「>デューン 砂の惑星PART2」見たあとなので、あんな高貴なお姫様が聴聞会にて、オッペンハイマーに騎乗位でピッタリくっついて、オッペンハイマー夫人のキティ as エミリー・ブラントに、じっとり睨みつけてるとか本当に最高ですよね。劇中でエロさは感じないのだけど、あの目に宿ってた情念というか極めて日本的な粘着質さみたいのは、グッと来る。
逆に、キティはアル中から突然立ち直った感あるので、立ち直りに唐突さを感じないではなかったのです。そこは劇中の大きな違和感かしら。
むしろ、この映画としてはやっぱりクリストファー・ノーランの特撮大好きっ子っぷりの方に意識は取られるのです。
あの炎の特撮は、俺がよく知っている特撮で、思わず笑ってしまったぞ。
核分裂とかは、正直目新しさはない表現だったのだけど、まさかIMAXの画面であの炎を見るとは思わなかったから、やっぱり日本特撮もちゃんと実写やIMAXでガンガン撮ろうよ。お金出そうよ!とは。
あとは、冒頭でも書いたけど、そこら中で言われているように音表現ですよね。
劇中、完全にウッカリしていたのだけれど、光より音の方が遅いのです。空気をすすむ速度が。
だから、あのシーンで本当に魂が抜けるような衝撃を感じてしまい、理性を立て直すのが大変でした。
本当に油断ならない。

にしても、「オッピー」っていう無闇な可愛さと、アインシュタイン as トム・コンティの全知全能感はどうよ?
とくにアインシュタインは、結局、最高の知性として描かれてしまうのだけど、それはそれでアインシュタインの苦悩が出てこなくてなぁと。

いずれにせよ、ビターズ・エンド配給してくれてありがとう。
ビターズ・エンドには足が向けられないですよ。まったく。

広告

BACK

雑感・レヴュ集 メタセコイアBANNER
(C) Copyright Unaru Bacteria,2024
e-mail bacteria@gennari.net