第523回 音楽の世界へようこそ(後編)

U・B  >さて、W杯の谷間(※1)にクロスフェーダに川本真琴(※2)の3rdアルバム「音楽の世界へようこそ」のレ
       ヴュです。
空虹桜>実はこのアルバムのキモかもしれない7曲目「クローゼット
U・B  >たしかに一番長い6:36。
空虹桜>なんかの入れ知恵があったのかもしれないけれど、この曲って、最初に聴いた時から川本真琴が自分の祖母のこと
       唄ってるのかなぁと思っていて、んでまぁ、最後の一行があるじゃない。
U・B  >盆には帰るよ※3
空虹桜>うん。一つの理解としては、川本真琴は一度死んでしまった人だから、盆には帰るってのがあると思うんだけど、それ
       を踏まえて「音楽の世界へ用こそ」ってタイトルは綺麗でいい気もしないではないんだけど、むしろアタシはこのアルバ
       ムって、音楽の世界から生とか死とか、そゆことを奏でてるアルバムだと思っていて、4曲目の「アイ
       ラブユー」にしろこの曲にしろ、
       「愛」をこんなに連呼する川本真琴をアタシは知らないんだけど、生とか死とかの間で「愛」を唄おうと思った理由があ
       るんじゃないかなぁと思えて、であれば、「川」とか「夕焼け」とかをメタファと捉えるのが筋かなぁなんて。「古びたク
       ローゼット」って、直接唄っちゃってるし。
U・B  >すみません。脳みそついてってないんですけど、ひとひら てのひら※4)で、むしろ水子とか妄想する俺
       は外道ってことですか?
空虹桜>言うまでもなく。
U・B  >やっぱりですか。そうですかそうですか。
空虹桜>川本真琴って人は一貫して自分のことを唄っていたのはたぶん誰もが認めるとこだと思うけど、その
       中でも、アイデンティティのとこが主題だったわけ。
U・B  >恋愛とか性愛とかではなくて?
空虹桜>うん。キスにしろセックスにしろ、徹底的に自分がいて、相手がいる必要があって、「1/2」なんて曲(※5
       はタイトルからして然りなんだけど。
U・B  >はいはい。この辺はミドリというか後藤まりこもそうで、そこの相似形は俺の中でかなり気になってるところなんだ
       けど、とりあえず続きをどうぞ
空虹桜>お言葉に甘えて。で、今まではその確認がずっと反復していた。理由は推して知るべしで、それが9年
       経ってどうなったかっていうと、この曲なんだと思う
U・B  >ん?話が飛んだぞ。
空虹桜>確立した個というか、自分の視座が落ち着いたから、そこから見渡したモノを自分の音楽の世
       界に取り込もうとしてるように聴こえる。
U・B  >その引き金が「クローゼット」?
空虹桜>じゃないかなぁと。似たようなことを最後にもう一回言うから、とりあえず、ここでは先に行きましょうか。
U・B  >んじゃ、9曲目は変態性炸裂の「縄文
空虹桜>「夜の生態系」(※6)もだったけど、やっぱりここまで来ると、川本真琴だぁ!って、安心するよね。
U・B  >相談したい 縄文の人々を呼んで 毎晩やぐらを囲めばわかるかもしれない
       (※7)って、なにをや!っていう。
空虹桜>アルミホイルとか高級釜とか、それが歌詞に出てくるのもアレだけど、そっから縄文に飛躍するのもアレゲでしょ。
U・B  >泥沼で突然80cmぐらい垂直跳びしたような感じと申しましょうか。
空虹桜>このイカれてる感が、実は川本真琴の素晴らしさなんだけど、その中でも今回の文脈で理解するなら、スチャ的
       なアイロニィ(※8)と理解するよりも、自分の生活力というか生命力の弱さに対する答えを、歴史にまで求めてでも
       生き延びる力が欲しい
U・B  >おおっ、豪快で無茶苦茶だ。
空虹桜>「あるといいながありすぎる」(※9)世の中で、でも、なんだか生き延びるがしんどいわけじゃん。小さい事です
       ぐ悩むし。(※10
U・B  >アクロバティックに10曲目「へんね」ですね。ペンネではありません。
空虹桜>なんだそれ・・・
U・B  >思いついただけです!
空虹桜>そのフリーダムさがいつも怖いんですけど。
U・B  >アレッスよね。ここで「地球」を「アース」と唄ってるのはやっぱり「明日」との掛詞ですよね。でもって、祭り囃子なコー
       ル&レスポンスに、土起こししてる音なんか被るあたりが、同じところを回ってる※11)ことへのセルフア
       ンサーというか、そんなことで迷っちゃうって「変ね」っていう。
空虹桜>喋ったなぁ。
U・B  >喋らせていただきました。
空虹桜>ちなみに、U・Bさん的に、最後、普通のおしゃべりをしてる川本真琴は萌えですか?
U・B  >無論。(※12
空虹桜>やっぱりか・・・
U・B  >さて、10曲目「」は本当に波音をただ流すだけ。
空虹桜>これも自然のループといえばループで。
U・B  >でもって、11曲目は意味のわからないタイトルの「ポンダコ」
空虹桜>ちょっとだけ、この曲は古いのかなぁとか思わないでもない。
U・B  >そッスか?むしろ、この曲が一番新しくて、川本真琴子持ち説の裏付けかとすら。
空虹桜>そゆこと言ってると、またGoogleとかWikipediaとかで、噂の元ネタ扱いされたりするんだよ。
U・B  >またって、ウチで噂の元ネタ扱いされたことあるのは良田君だけ(※13)ですから。
空虹桜>そうなの?
U・B  >そうです。そんなマニアックな話してなくていいから、もうちょっと曲の話を。
空虹桜>うんと、もちろん、アンタのような理解の仕方もなくはないと思うけど、いちおさ、ここでは成長談というか、エルサレムな
       わけよ。約束の地
U・B  >大丈夫?公に公開できる話になる?それ。
空虹桜>大丈夫。つまり、「わたしの場所」や「行く先」は、音楽の世界なわけじゃん。
U・B  >肯定的だなぁ。
空虹桜>いや、そゆことをくっちゃべるコーナでしょ。これ。
U・B  >ええ。でもって、今回のアルバムで一番ドライヴしてる13曲目「マギーズファームへようこそ
空虹桜カタカナ大行進で、川本真琴の無茶っぷり全開。
U・B  >最初、ボブ・ディランの「Maggie's Farm」かと思ったんだけど、今回、ググったらスゴいことが発覚しましたよ。
空虹桜>なに?
U・B  >福井駅前に「マギーズ・ファーム」って喫茶店があるんですよ!※14
空虹桜>ハハハ。ヒドい。もうなんか、今回のレヴュ全部それに持ってかれんじゃん。
U・B  >だろ?俺も、見つけた瞬間。やっちゃったー思ったもん。
空虹桜>なら、出さなきゃいいじゃんって話だけど、
U・B  >そんなとこで我慢利く芸風じゃねぇ!
空虹桜>残念だなぁ。歌詞内容からしてもボブ・ディラン的なのに。
U・B  >残念で結構ですとも。ちなみに、俺的にはこのアルバムで一番こゆ曲調が好きです。
空虹桜>さて、最後。14曲目「小鳥のうた
U・B  >何故かベースがCarol Kaye。
空虹桜>それはともかく、ここで初めて「神様」が出てくるんだけど、ここで出てきた神様は愛を届けるんだよね
U・B  >思わせぶりな。
空虹桜>でもって、最初にうるさい子どもと唄っておきながら、最後にはじめましてベイビィと、唄いあげるん
       だよ。(※15
U・B  >ホラ、川本真琴子持ち説じゃん!
空虹桜>むしろ、このタイミングで子どもができたという方が綺麗だと思うんだけど?
U・B  >それは都合が良すぎない?
空虹桜>カモね。ただ、どちらにせよ妄想で、あまり価値のある理解ではなくて、やっぱりここはさっきの話に戻るけど、この曲
       は「クローゼット」の死とか過去に呼応する生だと思うんだよね。
U・B  >最後にもう一回っていう?
空虹桜>そうじゃなかったら、川本真琴は帰ってきてくれなかったんじゃないかなぁっていう。そのキッカケが、ホントに生や死な
       のかはわからないし、そこまで突っ込んだインタヴュもなにも無かったんだけど。
U・B  >まぁ、ざっと見たアルバムのレヴュ系もたいしたことまで書いてなかったからねぇ。
空虹桜>歌詞カードにこの曲の歌詞と一緒にならん出るのは、やっぱり夜明けの写真だったりもするわけじゃない。
U・B  >はいはい。
空虹桜>昔のレヴュでいくつか指摘してた気もするけど、川本真琴の歌詞カードについてる写真も、それぞれにきちんと意味を
       持ってたりするから、この曲はちゃんとリスタートの曲なのは間違いないと思うし、積極的に意味深な
       方に取らなくても、自分の創作物が子どものようだって意味でも、全然死と生のアルバムとして理解して問題無いん
       じゃないかなぁと。(※16


※1 W杯:2010 FIFA WORLD CUP SOUTH AFRICA™のこと。なんとなく ™ を付けてみるのがオモローな気がしている28歳。
※2 川本真琴:本気でミドリのヴォーカル後藤まりこと顔が瓜二つでビックリしてしまったシンガソングライタ。
※3 拡大部は歌詞より引用。
※4 拡大部は歌詞より引用。
※5 1/2:川本真琴の3rdシングルにして「るろうに剣心」のOPだった曲。クロスフェーダではこちらで。
※6 夜の生態系:このアルバムの2曲目。つまり、前回参照。
※7 拡大部は歌詞より引用。
※8 スチャ的なアイロニィ:スチャダラパーの視点は常にアイロニィで、正しく斜めから見ているのだけれど、ここでの川本真琴は斜めではなく真っ直ぐな視点から飛躍してる(by 空虹
※9 スチャダラパーの「VS.サービス」の歌詞より引用。
※10 拡大部は歌詞より引用。
※11 拡大部は歌詞より引用。
※12 非関西圏の人間にありがちな、関西弁萌えもインクルードです。
※13 RIJとRSRにまつわるエトセトラのソースはいつもここ
※14 川本真琴は福井出身なので、これがネタになるわけです。
※15 拡大部は歌詞より引用。
※16 空虹桜59行。U・B44行で、無論、の勝ち。空虹のターン、次回以降ももうちょっと川本真琴です。


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