U・B >期せずして、今回は小沢健二(※1)の4thアルバム「Eclectic」のレヴュですよ空虹さん。
空虹桜>なにが期せずしてなのかよくわかんないんですけど、ホントにやるんですか?
U・B >やりますよ。やらせていただきますよ。なにが期せずしてって、風の噂でEMIと契約が切れたら
しい(※2)ってのを小耳に挟んだからなんですけど、ともかく1曲目「ギターを弾く女」
空虹桜>なんていうかねぇ。ニューヨークに移住して一枚目のアルバムの一曲目がこれだったわけじゃない。
U・B >もうなんか世の中上を下への大騒ぎ。
空虹桜>してたのは一部の病んだ人たちだけで、セールス的にはさっぱり。
U・B >あの頃のQJは良かったよぉ。ホント。(※3)
空虹桜>ヲタクの思い出美化は置いとくとして、6年ぶりのアルバムの一曲目がこれ。聴いた瞬間にみんな思った。
二人 >声が違う!!(※4)
空虹桜>・・・なにも合わせてこなくたって。
U・B >むしろここは積極的に合わせてくべきかと。
空虹桜>よくわかんない理屈を・・・ともかくさ、やっぱりそこが一番衝撃的だったんだよねぇ。もちろん、クロスフェーダでも、
途中途中必要に声の話を入れ込んできたから、読み返して貰えば、振り返ってみれば、必然の
帰結だったとわかるんだけど、それにしたって、当時そんなこと思いもしないじゃん。
U・B >しかも、6分超えてるのに歌詞は4行ぐらいしかなくて、中身もよくわからんという。
空虹桜>今回久々にアルバム引っ張り出したけど、歌詞カード無いんだよね。このアルバム。ブックレットっていう
か、折り込みに1ページみっちり歌詞が並んではいるんだけど、わかりにくい。
U・B >ある意味それはこのアルバムのコンセプトなんだよなぁ。きっと。
空虹桜>うん。アルバムタイトルの「Eclectic」が「取捨選択的な」という意味であるならば、歌詞の文字数の少なさも歌詞
カードの扱いも取捨選択的に捨てられたとわかるし、2ndなんかに象徴的な「ポップさ」というかそれ
こそ「渋谷系」的な要素は捨てられる。同様に「Eclectic」が「折衷主義の」という意味であるなら、このアルバムに
歌詞がまだ存在してるのは折衷主義の産物だろうし、たぶん一番折衷主義なのは小
沢君の声自体なんだろうなぁっていう。
U・B >もうなんか、1曲目でレヴュ終了みたいなコメントを。
空虹桜>ああ、ごめん。たしかに。でも、そう捉えると、たぶん後編に回るだろうけど「ブギーバック」の扱いも今までと違うア
ングルで見えてくるなぁ。
U・B >えーと、2曲目「愛について」へいってもらってもイイですか?
空虹桜>いいけど、あんまりもうコメント的に変化がないよ。
U・B >いや、べつに取捨選択的でも折衷主義的でもイイから、歌詞内容になにか。ツッコミどこあるしょ?
空虹桜>愛 火遊び ゆっくり 燃やしてみたい炎(※5)って、ライムが中途半端!とか?
U・B >そう来たか・・・べつにいいけど、それまで「僕」と「君」っていうか「仔猫ちゃん」だったのが「あの人」と「あ
なた」ばかりになってるとかって話を・・・
空虹桜>昔そういえば、そんなことも言ってたね!
U・B >忘れてらっしゃったんですか・・・
空虹桜>すっかり。丁度いいから3曲目「麝香」いこうか。
U・B >全然余談ですけど、思い出したんでいいですか?
空虹桜>なに?
U・B >最近まで俺「麝香」を「じゃっこう」って読んでたんですよ。
空虹桜>・・・で?
U・B >どうぞ、今のはお忘れになったお話を進めてください。
空虹桜>お言葉に甘えて。ちょうどこの頃、スチャダラが「ドコンパクトディスク」出して以降の沈黙期に入ってて(※6)、な
んか大人やろうとして遠いとこ行っちゃった感があったわけだ。アタシには。
U・B >今読み返すといろいろこっぱずかしい過去のクロスフェーダでそこら辺喋ってらっ
しゃいますね。たしか。
空虹桜>フるな。それを。
U・B >いいじゃん。どっちみち読む人は読み返すんだから。
空虹桜>そりゃそうだけど・・・えーと、声のこともそうだけど、この「麝香」って曲で一番思ったんだけど、明らかに無
理して大人ぶったことやろうとしてるのね。
U・B >ふと思ったけど、Cornelius(※7)が「69/96」から「FANTASMA」を立て続けに出して、2001年にトドメとばかりに
「POINT」出したのが小沢君的に大きかったりするんじゃね?
空虹桜>ああ!そだね。うん。なるほど。それは抜けた。ありうるありうる。っていうか、たぶん正解。もちろん、パッと目の方
向性は違うけど、本質的にもガジェット的にもやってること同じなんだよね。
U・B >なにせもともとはコンビ組んでたわけですから。
空虹桜>だよね。つまり、別れた直後は本名でやってる自分の方が大人っぽくて、実際Corneliusの1st聴いたときは、フリ
ッパーズから抜け切れてない小山田君を嘲る余裕があったのに、「LIFE」(※8)に答えるように出てきた「69/96」
が一歩先いく無茶苦茶さと色恋を唄わない大人さを兼ね備えてたがために、慌
てて「球体の奏でる音楽」出したら、今度は「FANTASMA」で応えてきたと。
U・B >んで、常に小山田後出しじゃん!と、ふて腐れてたら「POINT」が出てきてギャー!
空虹桜>ヤヴェ。小山田の野郎マタドール(※9)と契約して、アメリカでもCD出してるよ!とか思って、ニューヨーク移住し
たとかまで言っちゃえば、完全に小沢君の一人相撲じゃん!
U・B >しかし、ヤツならやりかねん。
空虹桜>でまぁ、シングルカットするなら「麝香」だとは今でも思うのだけど、今だからこそこの無理してる感がハッキリわか
ることで、実は同じくらい無理してる感のある「あらし」
U・B >コーラスが外人さんだから、日本語がものスゴく胡散臭いっていう。
空虹桜>むしろgozilla(※10)のせいだと思うな。この胡散臭さは。
U・B >一理ある。っていうか、自分で言っといてなんだけど、このアルバム全体が胡散臭い。
空虹桜>もうさ、後編でしゃべること無いぐらい言っちゃってない?今回。
U・B >んだ。とりあえず5曲目が「1つの魔法(終わりのない愛しさを与え)」で、実はこのアルバム
の中では1位2位を争う歌詞の長さで、曲の感じがとてもポップより。
空虹桜>言いたいことはわかる。たぶんきっと原曲は90年代に作ったんじゃないかとは思う。ただ、そこ
までこのアルバムの中で浮いてる印象はないし、むしろここからちょっと加速してる感じがするんだよね。
U・B >そういう意味ではたしかに6曲目「∞(infinity)」も歌詞は多め。
空虹桜>胡散臭いけどね。今まで軽い男だったのが、本気の男になった体を装うからってのもあるんじゃないか
と、この曲聴いてて思ったけど、このあとのつながりを考えると余計に折衷主義的言っときながら
全然折衷できてないじゃん!っていう。
U・B >いいんだけどさ、今さら一つぶっちゃけていい?
空虹桜>なに?
U・B >俺らがここでこのアルバム否定してたらダメじゃね?
空虹桜>ここまで来て醒めちゃ・・・
U・B >このアルバムの発売当初にお前さんがメタセコに書いた文章とだいぶノリも違うしなぁ。
空虹桜>それはまぁねぇ。でもホラ、それこそメインはここからというか、この次の曲からだから。(※11)
※1 小沢健二:「クスリやらないだけ岡村ちゃんよりマシ」感が出てきた渋谷の王子様。過去紹介分はこちら。
※2 もうとっくにリンク切れしてる可能性はあるけど、詳しくはこちらを。
※3 あの頃のQJ:大塚幸代が編集部にいた頃の「Quick Japan」のこと。
※4 「ラブリー」なんかそうだけど、3rdまではちょっと無理して高い声を出していた小沢君が、この曲じゃずっと低く掠れた声で唄ってる。おそらくはジャズ方面の影響(by 空虹)
※5 拡大部は歌詞より引用。
※6 2000年に「ドコンパクトディスク」が出たあと、2004年の「The 9th Sense」までリリースが無かった。スチャダラパーについてはこちらを。(by 空虹)
※7 Cornelius:ご存じ「猿の惑星」の人にして小沢君の元相方、マヒナスターズの息子小山田圭吾のこと。ちなみに、「69/96」は2nd、「FANTASMA」は3rdで「POINT」が4thアルバム。この人も寡作な人。
※8 LIFE:小沢健二の2ndアルバム。詳しくは前編・後編で。
※9 マタドール:闘牛士なんだけど、ここではアメリカのインディーズ・レコード・レーベル「マタドール・レコード」のこと。昔は「Pizzicato Five」や「ギターウルフ」なんかが所属していた。
※10 gozilla:日本語にするとゴジラ。つまり、「ゴリラ」と「クジラ」を足して2で割った名前を付けられたことで有名な、みんな大好きな東宝の巨大怪獣のこと。これって権利関係どーなってんだろ?
※11 空虹桜46行。U・BU・B34行でなんとか俺の勝ち。自分たちでも、今回は濃いのか薄いのかよくわかりません(苦笑)