第662回 我ら、時 DISC2(後編)

空虹桜小沢健二※1)へ15,000円注ぎ込んで「我ら、時」パルコ Amazon)を語って、元を取った気
       になりましょうというDISC2の後編です。
U・B  >後編はDIS2の5トラック目は「強い気持ち・強い愛」からでございます。アルバムと構成がちょっと違っていて(※2)、
       さらにトラック的にはこれまたいくつかのライヴトラックをつないだ感じ。
空虹桜>にしても、このサビの高揚感はスゴいよね。スカパラホーンズのアゲっぷりに寄るところが大きいとは思うんだけど、なによりア
       タシたちは刷り込みがあるからCDで聴いてるのにこのタイミングでフロアの照明点いたりする
       んだろうなぁとか、余計なことまで妄想できちゃったりするんだけど、刷り込みがない若い子とかが聴いたらこれどう聴こ
       えるんだろうね。素直にちょっと知りたい。
U・B  >どうなんッスかねぇ。それこそ、こないだでんぱ組.incがカヴァしてました(※3)けど、ちょうど俺ら世代が30代に入って来て、チ
       ルドレン的な刷り込みからのカヴァに派生したりするじゃないですか。すると、今の子たちはそっから入ってきたりして、逆に
       純粋な初体験ってすくなくなる傾向にあると思うんですよ。
空虹桜>単純なことを難しく言ったね。
U・B  >ええまぁ。あとアレですよ。今さらながらに1995年の曲だったりするのにこの普遍性って、やっぱり筒美京平マジック
       も働いてるのかなぁとかさ。(※4
空虹桜>それこそ、トラック1の話じゃないけど、この街の大衆音楽たるスケール感というか。
U・B  >バブル終焉紀とはいえ、「It's TOKYO」みたいな感じがね。そしてトラック7が「今夜はブギー・バック」しかも、京都
       公演のスチャダラパーが出てきたバージョン。(※5
空虹桜>ああ、nice vocalとはいえ「ブギー・バック」もやるのか感からの、スチャ出てきて異様な盛り上がりっていう。
U・B  >当たり前っちゃ当たり前なんだけど、客みんなフルで唄える
空虹桜>なんの中身も無い曲なんだけど、HipHopアンセムたる説得力で、ホントに心のベスト10 第一位は こんな
       曲だった※6)りするっていうね。
U・B  >中身の無さとか、これだけの盛り上がりっぷりこそが、パーティラップのパーティラップの真骨頂とも。
空虹桜>「DA.YO.NE」論(※7)につながるかもしれないんだけど、小室がglobeでやりたかったことより1年早くて(※8)、かつ小沢健二
       というポピュラリティがあったからこのポジションがある
U・B  >はいはい。何故か「DA.YO.NE」がコミックソング扱いされちゃってるのって、歌パートが有るか無いかだと。
空虹桜>うん。こうやって、20年経ってからオリジナルをライヴで聴き返すというか、体感すると、受容のされ方というか、浸透力と
       いうか、ウケ方みたいなのの差異が、よりハッキリして見えるんだよね。
U・B  >なんて小難しいのをすっ飛ばして8トラック目は「自転車」の朗読。
空虹桜>入りのタイミングをミスったのだけれど、朗読の中でシレッと次の曲を紹介してる。
U・B  >シレッとね。一瞬上がるけど。本題とはまったく関係無い感じもするけど、このライヴのコンセプトが日本的というかア
       ジア的なところだったりするじゃないですか。
空虹桜>でも、ここで小沢君が紹介してるアメリカ人ってハイソサエティなんだろうな。って気はするんだよね。だってアメリカ人のほとん
       どは進化論信じてなかったりするわけじゃない。科学的なモノの見方はアメリカでも少数派で、だから
       こそ、科学的なモノの見方は価値があるわけじゃない。(※9
U・B  >この朗読って話が混線しているから、なんとなくわかった気がするんだけど、セキュリティの話と自転車の話とアジア的な価値
       観って全然違う話で、アジア的な価値観って見方自体がある意味、勝手な思い込みだったりするわけじゃない
       ですか。
空虹桜>「一神教的な」とか言ったら、こないだ峯岸から強烈な反対にあった(※10)んだけど、単純にカオス=アジアな構図ってちょっと
       違うよな感はあって、本質的にはこの世は全部カオスなんだから「欧米的」って言い方がすでに欧米コンプレ
       ックスだよなぁっていう。
U・B  >あのオザケンでも欧米コンプレックスっていう、日本的な刷り込み
空虹桜>それこそ、アメリカ的の中にはネイティヴ・アメリカンだって含まれるハズだしね。
U・B  >ただ、夜はライト点けろよ!ママチャリ!!
空虹桜>殺す気か!とか、思うよね。
U・B  >テメェのタメじゃなくて、俺のためにライト点けろよ。っていうのを、いい加減わかっていただきたい。それはともか
       く、9トラック目がフリにあったとおり「夢が夢なら
空虹桜>曲が中国的だから、流れの説得力はたしかにあるし、曲名から「胡蝶の夢」なんて連想もさせるから、余計にアジア感がある。
U・B  >逆に、今聞き返すと、アレだけ神様とかにかぶれていたオザケンにしては突発的なトラックなんですよね。
空虹桜>セールス的には失速感がある時期の曲だしね。
U・B  >原曲は1年間をシレッと唄いあげてるのだけれど、微妙に端折ってたりするあたりの意図(※11)が今ひとつわからんのですが。
空虹桜>結婚して、一人じゃなくなったからじゃない。
U・B  >やっぱりそゆ解釈ですか。
空虹桜霜月のことを忘れないであげてくださいとは思うけどね。
U・B  >そこはつなぎ的な理由(※12)でしょうね。さて、DISC2最後はなんと「麝香
空虹桜>まさかの「麝香」だけれど、麝香の匂い自体はインド感というか。
U・B  >でも、あの「Eclectic」(※13)の時のヴォーカルを楽器へ突き詰めた感と比べると、やっぱり声が細くて話にならな
       いッスね
空虹桜>流れ的に違和感はないのだけれど、そもそもの歌唱力的に違和感があるというか、結局ムード重視の曲なので、
       イヴ向きではないというか。
U・B  >そこは違うデスよ。これは今のオザケンに向いてないだけ
空虹桜>かなぁ・・・元々王子様とか言われてたわりにユニセクシャル性の象徴みたいなポジションだった人が、セクシ
       ャルな要素の強い曲に挑戦したのがある種売りのアルバムだったわけじゃない。「Eclectic」って。そ
       れこそが元々ジャズに近接していたからこその行く末だし。
U・B  >でも、そんなところで挫けるようなバックバンドじゃないじゃないですか。
空虹桜>なんだけど、そのあと去年の「東京の街が奏でる」(※14)とかも踏まえると、もうちょっとカチッとしたところへ今、
       漸近してるじゃない。
U・B  >まぁたしかに。
空虹桜>実はテーマと音楽性が矛盾というか、そこまで整合してないのがこのところの小沢健二の特長というか、素の小沢
       健二なのかなぁと。(※15


※1 小沢健二:王子様だから許される吟遊詩人。嫁の存在をようやく公表した。
※2 歌詞から「“Stand up ダンスをしたいのは誰?"…」なんかが省略されている。
※3 でんぱ組.inc:ヲタクが売りのアイドルグループ。プロデュースはヒャダインこと前山田健一。
※4 筒美京平:本名は渡辺栄吉!ビックリ。それはともかく、作品の総売上枚数は7,600万枚を超える偉大なる作曲家。
※5 スチャダラパー:空虹さんが敬愛するヒップホップユニット。過去のクロスフェーダはこちら
※6 拡大部は歌詞より引用。
※7 DA.YO.NE:Mummy-Dが作詞してることで有名な、EAST END×YURIの1stシングル。クロスフェーダではこちらで駄話してます。
※8 小室がglobeでやりたかったこと:たしか昔どっかで、アメリカやヨーロッパで流行ってる、ヴォーカルトラップの融合に憧れてglobeをはじめたと言っていた(by 空虹
※9 進化論信じてなかったりする:彼の国では教育することの是非を裁判してるんだぜ。
※10 峯岸:ご存じミネギシズムの中の人。「500文字の心臓」の管理人。名はみなみじゃない(by 空虹
※11 微妙に端折ってたりするあたりの意図:「ああ 君が居た頃のことを思わない 僕は一人で生きることを学ぶさと思いながら」が省略されている。
※12 ここでいう「つなぎ」はメロディ的につながってるって意味。DJ的な文脈の「つなぎ」
※13 Eclectic:小沢健二の4枚目のアルバム。クロスフェーダではこちらこちらで。
※14 東京の街が奏でる:小沢健二が2012年に行ったライヴのこと。U・B空虹が二人して見に行った。
※15 空虹桜38行。U・B32行で、の勝ち。このシリーズはまだあと1枚あります。


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