U・B>THEイナズマ戦隊(※1)の11thアルバムにして超名盤「GALAPAGOS」(CD / MP3 / iTS)を語る後編です。前
編とここまでほぼ同文です。
空虹桜>なにをセルフメタツッコミ。
U・B>信頼できるツッコミがいると、ボケやすくて良いですよ。
空虹桜>褒められてるのか貶されてるのかよくわかんないけど、7曲目は「這いつくBATTE」
U・B>もう同じことしか唄ってないと言われても否定は出来ないんだけど、こないだナタリー(※2)のインタヴュ読んでたら、イナ
戦のお客さんが求めてるものをオレらは得意としてたのに、ちょっと前の自分たちはそ
うじゃないものを書こうとしてたんです。だから「原点に戻って曲を書いていきましょ
う」と何年か前から考えてて、(※3)言ってて、ちょうどこのアルバムでその戻ってきた感をヒシヒシと感じてた
んだけど、この曲なんて正しく!でさ。
空虹桜>誰だって 這いつくばって 這いつくばって生きてる 這い上がろって 這い上がろ
って生きてるだけだったら、今までとたいして変わらない感なんだけど、そのあとに続いて大人みたいな子供な
自分が大嫌い 周りの声は気にしちゃないけど気になる 東京に来て夢見てるなんても
う古い? でもそんな自分が好き(※4)って唄えるのは、年の功だと思うよ。
U・B>今までは「覚悟」を唄ってたんだけど、今なら地に足着けて、経験を唄ってるっていう。
空虹桜>照れずに「自分が好き」って言えるのはなかなか難しいんだよね。とくにこの手の自我がねじくれて育っちゃっ
た子は。
U・B>痛たたた・・・
空虹桜>自覚症状はあるんだ。
U・B>元カノにも言われましたし。つか、言うても、自分好きじゃないですけどね。俺。
空虹桜>はいはい。8曲目は「終わらないストーリー」は、抜けの良いロックンロール。
U・B>さっきは経験唄うようになった言ったけど、こっちは覚悟の唄ではある。
空虹桜>細かいとこだけど、日に日に老いてく それでも心は動く 軽く世代を越えて 夢見る力は溢
れる(※5)って、世代を軽く超えるのって、結構難しいよ。
U・B>フリと違う話持ってきましたね。でもさ、それも覚悟とか心意気な話をしてるわけだから、OKじゃないですかね?
空虹桜>メロディのキャッチィさで誤魔化してる感じはするけどなぁ。
U・B>そんなにこの曲好きじゃないと?
空虹桜>どっちかって言うと、ストーリィはどうやって着地させるかがキモだと思ってる人だからさ。9曲目は「朝
焼けの唄」
U・B>この曲はもう俺は今でも変わらない街でダイヤモンドと信じた石を 削って磨いてなんとか
生きているよ 笑っちまうだろ(※6)が、抜群にいいんですよ。「変わらない街」って、東京ってよりは音楽
業界なわけですよ。
空虹桜>ほぉ。
U・B>でまぁ、「ダイヤモンドと信じた石」の「石」は「意志」とのダブルミーニングなわけじゃないですか。
空虹桜>ほぉ。
U・B>そんな自分に対して、自虐的に、でもプライドを持って「笑っちまうだろ」と言ってるわけで、カッコいいんですよ。そ
の割り切りというか、結局、「応援歌」(※7)の時からずっと言ってるけど、実は、上中丈弥(※8)という人は熱いクセに凄い
醒めていて、常に第三者視点をキープしてる人だから、3度目のメジャデヴュ出来たんだろうなぁっていう(※9)
空虹桜>まぁ、今どきメジャデヴュってのもどうよ?って感じはあるよね。
U・B>そこが音楽業界の特色だとは思うんだよね。空虹さん経由で見る文芸界隈(※10)とかと比べて、裾野は同じくらい広そうだけ
ど、金になる裾野というか、インディの入り込んでるマーケットの大きさだと、圧倒的に音楽の方が大きい。
空虹桜>音楽なんてオワコンとか言ってるノータリンがウジャウジャいるけどね。
U・B>なもん、紀元前からある表現なんだから、とっくの昔にオワコンだってね。
空虹桜>全部流行り廃りで区切ろうとするのは、定義づけの方法論としてはありだけど、あくまでも方法論の一つでしか無
くて、それを振りかざすことほどダサいことはないんだけど、話がだいぶ逸れそうな雰囲気だから、10曲目
「さよならSummertime Blues」は、ポピュラリティがありそうな曲。
U・B>まぁね。関西テレビの野球中継テーマソングでしたしね。成功じゃなく名声じゃなく 綺麗事を並べたい
んじゃなく 誰かの為 生きれるなら 限られた時間も捨てたもんじゃない(※11)とか、
ウケが良さそうだもんね。
空虹桜>なんだか不本意気な。
U・B>いや、いい曲なんですけど、最初聴いた時テンション上がったんですけど、聴き直す内にそこまで肩入れしなくなってしまったの
で・・・
空虹桜>じゃあ、11曲目「合言葉〜シャララII〜生きててくれてありがとうな」
U・B>ホント、この曲も名曲過ぎて、歌詞全編引用したいんですけど、YouTubeに無いんでこの溢れる想いが伝え
にくいんですよ。
空虹桜>ウザい。
U・B>俺はもう決められないんですけど、空虹さんだったら、どこ引用しますか?
空虹桜>アタシ?えーと・・・為さねば成らぬぞ何事も これが俺達の合言葉 風前の灯火なら ガソ
リンを注いでやる(※12)って、なんかそんなアルバムあったよね?あと、スキカウ(※13)にもそんなのあったし。
U・B>はいはい。3rdアルバムが「為さねば成らぬIII枚目」(※14)ですね。あと、スキカウって話だと、このあとの歌詞に生きて
てくれてありがとうな 言葉にすると軽すぎるよな この愛が届くまでは すぐ側で生
きてやる(※15)ってあるじゃないですか。ここも踏まえて、この曲はイナ戦版の「深夜高速」(※16)だと思うんです。
空虹桜>はぁ。
U・B>結局のとこ、「日本のロックンロールの系譜は自己肯定へ向かう」言うと凄い阿呆っぽいけど、だが、それがいい。
空虹桜>自己肯定って意味では、自分しか認めてくれないから認めるってよりは、最後の最後で、自分ぐらい信じてやれなか
ったら生きてられないっていう、必死さというか苦しみみたいのが見え隠れする。
U・B>だからこその生きててくれてありがとうなで、この曲は他人のために捧げられてんッスよ。
空虹桜>ああ。そうだね。たしかに他人ありきだね。
U・B>最近ちょっと理解できるようになってきたんだけど、捧げたいんですよ。
空虹桜>ほぉ。捧げたいんだ。
U・B>うん。自分のためではなく、誰かのために生きていると実感したい。
空虹桜>ウザいなぁ。
U・B>ええ〜、その切り返しないわぁ。
空虹桜>どうせアンタ他人とずっと一緒にいられるタイプじゃないじゃん。最後12曲目は「マザコンのうた」
で、「33歳」(※17)で父親を唄ったからってわけじゃないだろうけど、母親の唄。
U・B>しかも、珍しく人の作った曲だと思ってググったら、作詞の人がなかなかスゴい(※18)ですよ。よくぞ、これ音源にしたなぁっ
ていう。
空虹桜>そうなの?
U・B>まぁ、作者の経歴は作品に影響しないですけど、ちょっと、母への感謝とか言いたがる、一昔前
のヒップホップみたい。
空虹桜>最後の最後で全否定した。
U・B>とはいえ、2017年にこの歌詞読むと大人になって 孤独がしみたときも 世間が敵に見えたときも
あなたはいつも信じてくれた 理由なんか聞きもせずに(※19)って歌詞は、なかなか来ますよ。
空虹桜>たしかに、作詞の人は世間を敵に回したもんね。とりあえず、そろそろまとめてください。
U・B>さっきも言ったけど、イナ戦3回目のメジャデヴュにあたり、このアルバムがステップになってるのは意味深いと思ってて、ま
たこっからイナ戦がはじまると思うと、楽しみで仕方ないですよ。(※20)
※1 THEイナズマ戦隊:Vo.上中丈弥(基本全曲作詞)、G.山田武郎、Ba.中田俊哉、Dr.久保裕行の四人組ロックバンド。詳しくはオフィシャル参照。
※2 ナタリー:元々は音楽ニュースサイトだったけど、今となってはサブカルニュースサイトみたいな面持ち。ミュージックマシーンのアドレスは今も生きてます。
※3 拡大部はナタリーのインタヴュより引用。
※4 拡大部2ヶ所は歌詞より引用。
※5 拡大部は歌詞より引用。
※6 拡大部は歌詞より引用。
※7 応援歌:THEイナズマ戦隊のメジャデヴュ曲にして、最大のヒット曲。
※8 上中丈弥:※1の通り、THEイナズマ戦隊のヴォーカリスト。
※9 3度目のメジャデヴュ:最初はワーナー、次に日本クラウン、そして2017年にまた日本クラウン。
※10 空虹さん経由で見る文芸界隈:同人誌やフリーペーパーを、少数刷って満足する世界。
※11 拡大部は歌詞より引用。
※12 拡大部は歌詞より引用。
※13 スキカウ:U・Bが一番好きなバンド、スキップカウズの略称。イナ戦ともそれなりにつながりが深い。
※14 為さねば成らぬIII枚目(CD):THEイナズマ戦隊の3rdアルバム。クロスフェーダでは第388回と第405回で喋ってます。
※15 拡大部は歌詞より引用。
※16 深夜高速:日本のロックバンド、フラワーカンパニーズの名曲。この曲の前後で、日本のロックバンドについての話す内容が変わるぐらいのターニングポイントな曲なんだけど、通じる人にしか通じないのが難。
※17 33歳:「GARAPAGOS」3曲目。超名曲。U・Bの思いの丈は前編で。
※18 作詞の人がなかなかスゴい:電通の人(リンクはWikipediaです)
※19 拡大部は歌詞より引用。
※20 空虹38行。U・B48行で、俺大敗。何度だって何度だって何度だって言いますけど、このアルバムは良いアルバムです。