オンライン文芸マガジン「回廊」Volume 07の第一特集「つながる超短編」に参加させていただきました。
http://magazine.kairou.com/07/index.htmlせっかくの機会なので短評12本と簡単な自作解題。
『DANCE WITH DANDELION』 著/水池 亘
タイトルがタイトルだけに、フリとしてはイメージが限定的である。
が、ここからどう転がすか試されているのかなぁと、個人的には。
作品自体は上手く抑制されていて、拡散しないところがスゴい。
・『回廊』チーム
『YOU'RE JUST A THING』 著/桂たたら
序盤ご主人様のハズが終いには従属し、
序盤隷属していたハズが終いには教授する。
穏やかに反転する世界が、なんだか心地よい。
『A ROSE FOR NOTHINGNESS』 著/キセン
この企画のキモはつながる超短編同士の間に存在する
クレバスや断崖や壁やらをどうやって越えているか、
そのダイナミズムにあると思う。
この作品が二番目に存在する。
ただそれだけでこの企画の成功は明らかだ。
『DANCING FINGER』 著/フルヤマメグミ
小沢健二に「仔猫ちゃん」と呼ばれていた少女たちは既に三十路にいたり、
気がつけば、小沢自身は唄からすら離れた(ように見える。詳しくはいつか書く。待って。お願い)
華やかな光や包むようなハーモニーは今現在の少女たちに注ぎ、
少女のつもりのアタシたちには孤独が寄り添う。
『SLOW SLIP WALTZ OUT OF THE WORLD』 著/赤井 都
赤井さんがこっちにいるって!
的確にサンプリングされ、骨子に埋め込まれていくビート。
バックヤードで確実なリズムを刻むループ。
「ワルツ」も「テクノ」も同じダンスミュージックに違いない。
・500文字チーム
『GIRLIE』著/タキガワ
水池君から順番の案内とチームの作品が届けられたとき、この作品が先頭で安心した。
適度な距離とそこへ飛躍するダイナミズム。
なによりも、タイトルがいい。
「夜」という設定と「けたたましい」というフレーズをサンプリングした。
『CLOUD GAZING』 著/雪雪
雪雪さんが前にいるというのは、頼もしいのとともにプレッシャである。
確実にアタシの手が届かない世界を描いてくれるだろうし、
手を伸ばす人には届くよう、手がかりを残してくれているから。
触れたのは届いたからであることを、願う。
「空」と「雲」をサンプリングし、ボンヤリと目標を定めた。
『I LOVE ME, TOO』 著/葉原あきよ
しばしば、まるで自分か書いたかのような錯覚を、あきよ作品に感じることがある。
明確な誤解で、現実にはあきよ作品ほど焦点が定まっていない自作にうんざりするのだ。
一度お会いしたいと心から思う。病に打ち勝たれることを。
「同一の存在が複数いる」という設定とホラーの要素をサンプリングした。
『WHAT A LIFE!』 著/空虹 桜
名字と名前を分けて表記していただき、初めての方にはわかりやすくなっていると思う。感謝感謝。
ともかく、この順番とメンバからして、「結」であり落とさなければならないと最初に覚悟した。
従ってコメディ路線。
サンプリングするには有り余るほどのフレーズとイメージが目の前にあるので、
設定はすべてサンプリング。
あとは英題と邦題の音を同じにするだけ。
今さら「すっかり」が近接している瑕疵に気づいたり、薄味過ぎた気もするけど、キャラは立ったか?
・心臓チーム
『FAREWELL, FAREWELL』 著/はやみかつとし
はやかつさんの嗅覚の鋭さには屈服する。
おそらく「センスがいい人」とははやかつさんのような人を指すのだ。
12本中好きな作品を訊かれたら、間違いなくこれを選ぶ。
自作が一番短いと思って出したのだけれど、120文字ちょっと多かったのが悔しい(笑)
『REVELATION IN ARCADIA』 著/白縫いさや
「千文字世界」で 白縫いさや a.k.a 犬 が発見されて1年が経つ。
正直な話、ここまで書ける作家になるとは思わなかった。
もしかしたら、もの凄い成長ドラマをアタシは見ているのかもしれない。
犬だけど(笑)
『MY MARY POPPINS DOESN'T HAVE AN UMBRELLA』 著/マンジュ
白縫−マンジュラインは、両者の参加表明時点で決まっていただろう。
それはともかく、「君」と二人称が登場するマンジュ作がとても好きだ。
柔らかく温もっていて、人恋しさが募る。
そして、心が一瞬だけキュッとし、自分が人間だと実感するのだ。
『BLOOMY LIZARDS FOLLOW THE LOTUS SEAT』 著/sleepdog
タカスギさんとはやかつさんと、こっそり自分の作品は300文字前後で良く仕上がるのだけれど、
sleepdogさんは500文字に近づけば近づくほどいい作品になると思う。
その意味と今のノリっぷりからして「500文字の心臓」というサイトを代表する作家だと思う。
500文字は短いようで広い。