第140回 今夜はブギーバック談義

本稿は2003年に語られたものです。現状と異なる場合があります。
本稿以後の「ブギーバック」については「今夜はブギーバック談義2」で語っています。

U・B  >横の比較ってのは結構あるんだけど、縦の比較は珍しいんじゃないかと思って、こういう
       話をしてみようかと。
空虹桜>まぁ、その場合重要になってくるのは、なにが縦でなにが横かってことだろうね。
U・B  >いや、そういう問題じゃないし。えーと、まぁ、ここまでいろんなヴァージョンがある曲も珍
       しいんじゃないかと。(※1)そこで未確定のもあるけどとりあえず年代順に並べたらなんか見え
       るかなぁと。
空虹桜一回話しちゃった曲ばっかだから見えてるもんはわかってる気もするけど。
U・B  >それは言いっこなし。っていうか、だからこんな企画を用意したわけだ。そんなわけで、まず原曲である
       今夜はブギーバック(smooth rap)今夜はブギーバック(naice vocal)
空虹桜>結局さ、日本の音楽シーンって、特に快楽主義的なモノはこの曲前と後に分けられちゃう
       んだよね。disを履き違えてる馬鹿やHipHop勘違いしてる餓鬼どもが多いんだけど、この曲へのア
       ンサーソング(※2)にすらなれないようじゃ負け犬の遠吠えにもならない
U・B  >アクセル全開って言うより、むしろリミッタ解除ですか?
空虹桜>まぁ、この曲のあとに「あるのはどうでもいいものばかり」(※3)なんて言っちゃうヤツらだからね。アタ
       シがなにか言うことは、もしかしたらスチャダラパーをものスゴく侮辱するかもし
       れないってのはわかってるんだけど。
U・B  >余談だけど、俺的にはsmooth rapの方が絶対メジャなのに、カラオケ行くとnice vocalの方が
       ってる確率高いってのが笑える。
空虹桜>笑うなや。それにどのみちアタシは両方唄えるから問題ないもん。
U・B  >まぁたしかに、お前は知ってるわな。んで、発表順で次にポテン・ヒッツ今夜はブギーバック
空虹桜>東京ドームでライヴすることは永遠に無いと思うけど、もし今こうやって仮想ライヴをやるんだっ
       たら絶対こんなアレンジにならないだろうし、だからこそ貴重かなって気もする。
U・B  >今夜はブギーバックの意味合いを考えればまっとうな妄想だよな。
空虹桜妄想とか言うな。でもまぁ、アレやコレのイヴェント(※4)を考えれば、案外あり得ない
       話じゃないとは思ってるんだけどね。密かに。
U・B  >たしかに。んで、次がサイクル・ヒッツに入ってる2曲でまずは小山田圭吾ヴァージョン
空虹桜>今回は久々手元にきちんとした資料置いてる(※5)から言えるんだけど、実はこの曲コーネリアスの
       「96/69」の宣伝なんだよね。だから出だしにフレーズが入ってくるし、波だし。(※6
U・B  >それにしたって、業界的には小山田圭吾がブギーバックを唄うとは思わなかった
       けで、ほとんど曲イジってないのはそこら辺の対抗意識だったりかなぁ。(※7
空虹桜>どうなんだろうねぇ・・・なんだかんだいって小山田君は小沢君を認めてるのかなぁ。あ
       とさ、案外この頃は二人とも声質似てるよね。
U・B  >二人ともナルシストフェミニンだからな。んでもってもう1曲が高木完・K.U.D.Oヴ
       ァージョン
空虹桜>今の子がホント高木完を知らないのはヤヴァイよね。どれくらいヤヴァイかっていうと、
       自称マンガオタクが藤子不二雄Aを知らないくらいヤヴァイ。
U・B  >いくらなんでもそれは大袈裟じゃないか?っていうか、大袈裟
空虹桜>全然。だって、今の子たちって、いとうせいこうがラップでCD出してることも知らなければ、みうらじゅん
       が漫画家だってことも知らないんだよ。(※8
U・B  >いや、それとこれを一緒にするのはいかがなものかと
空虹桜>そのくせしてZEEBRAあがめてたりするのは、ホントわけわかんないよね。って、まぁいい
       や。アレだよ。アタシもアンタに教えてもらうまで(※9)は高木完がパンクやってたなんて知らん
       かったからさ。
U・B  >そうそう。まだまだ勉強中の身なのでありますよ。俺たちは。
空虹桜>なんかその言い方腹立つけど、ともかくさ、ここまでが一区切り※10)であえて表現す
       るなら前期スチャダラパーなのね。そこで表現されてるのは、若さに裏打ちされた
       ユルさ。これはもう若いウチしかできない芸当なんだよね。
U・B  >歳取ると本人的にも空気的にも、少しはしっかりやんなきゃみたいになるしな。
空虹桜>っていうか、むしろ、若いウチはそれに抗えるんだよ。まださ。だからこそ「今夜」は「
       ギーバック」なんだよ。
U・B  >それで、後期っちゅうか中期っちゅうかになるわけだけど、まずはトリプルショットEP内のブギ
       ーバック。場所は梅田Heat Beat。
空虹桜>トラックがさぁ、原型とどめてないでしょ。
U・B  >とどめてないどころの騒ぎじゃないよな気がするが。
空虹桜>それがラップの良さだと思うし、嫌いじゃないしね。なにより、テクニックなユルさじゃな
       い?だるさよりちょっとだけアッパ系な。
U・B  >アッパ系っていうか、むしろ漂ってる感じかな。俺には。
空虹桜>そこら辺ってやっぱ30オーヴァが大きいのかなって思うし、経験値を積んだことで変えれる
       ところと変えちゃダメなところがしっかりしてるんだよね。きっと。
U・B  >実は真面目にやるよりユルくやることの方がヘヴィだったりするもんな。
空虹桜>アンタとか見てると特にそう思うよね。
U・B  >うるへぇ。んで、いよいよ目玉だけれど、まずは宇多田ヒカル1stライヴヴァージョン
空虹桜>ライヴであることを差し引いても、現在日本語で発表された全HipHopの中でもっとも優
       れた曲だとアタシは思う。偶然FMで流れてるのを録ってくれた某氏のおかげで聴けたん
       だけど、テープなのに何回巻き戻して聴いたことか。
U・B  >これはやっぱ宇多田のヴォーカル力だよな。なんだ。やっぱこの小娘スゲェよと。
空虹桜>全般的にはそうだよね。最初ずっとリードしてきたスチャダラパーが3番ぐらいから完全に宇多
       田に主導権取られちゃってんのね。まぁ、曲の展開上当然ったら当然かもしれないし、彼女のライヴだ
       から譲ったのかもしれないけど。けどさ、彼女の空間掌握力って洒落なんないよ。ホント。
U・B  >たぶん、これ生で聴いたら泣くよな。
空虹桜>客観的に考えたら泣くような曲じゃないんだけどね。1stライヴってこともあって相乗効果なん
       だろうなぁ。もう2度と同じレヴェルでパフォーマンスできないかもしれないし、も
       しかしたらもっとスゴいことできるかもしれない。
U・B  >それに比べると、ラッパーがRIZEに変わるとアレだよな。
空虹桜>そもそもRIZEあんま真面目に聞いたことないから疑問なんだけど、これホントRIZE
       なの?あと、椎名林檎と宇多田の声質ってあんま変わんない気しない?(※11
U・B  >そう書いてあったんだから信じるしかないべや
空虹桜>まぁね・・・ともかくさ、スチャ+宇多田の時は前半スチャで後半宇多田がリードしてったんだけど、こっ
       ちの場合は全部宇多田がリードしちゃってるでしょ。したっけもうRIZE立場無いもん。
U・B  >いくら自分たちの曲じゃないとはいえ、途中で助け船出されてるしなぁ。
空虹桜>ラップの基本はフリースタイルだから、そこら辺で言い訳して欲しくないけどね。でも、ちょっ
       とね、この2曲を立て続けに聴いたら、誰か(※12)があんなことホザいてもしかたないかな
       てちょっと思っちゃうようね。レヴェル低いもん。明らかに。
U・B  >んで、今んところ、巷に出回ってる音源の中でもっとも新しいのが小沢健二の「今夜はブギー
       バック/あの大きな心」なわけだ。
空虹桜>この流れで聴くと、不思議なくらい自然なんだよね。トラックも歌詞も
U・B  >まぁ、間にRIZEを挟んでるとはいえ、さっきのお前の分け方でいけば、前期との差に比べればなめ
       らかにつながってる気がするわな。
空虹桜>つまり、そこがさ、メタセコにも書いた(※13)けど、「大人になっても」の真意だと思うんだよね。
       くつになっても「ブギーバック」なんだっていう。
U・B  >でも、一般的に見たら、それは成長しないダラしないヤツってことだよな。
空虹桜>うん。まぁね。だけど逆に、大人になっても周りの目なんか気にしてるの?とも
       言えるし、大人になったのに、それぐらいのことも許容できないの?とも
       言えちゃうんじゃないのかなぁ。
U・B  >う〜ん・・・歌詞からだけぱっと取っちゃうと、単に甘えたいだけのガキだしなぁ・・・
空虹桜>そうそう。そうなんだって。結局はさ。そこをいろいろ言い繕って小綺麗に見せるのは小
       沢君だから。これがスチャだったらまた違うアプローチになると思うし、ここまで来たら、もう一回
       SDPfeat.小沢健二が聴きたい!
U・B  >ああ。それは聴きたいかも。じゃ、ついでだから訊いとくけど、今カヴァするんだったら誰
       にカヴァして欲しい?今夜はブギーバックを。リミックスでもいいけど。
空虹桜>唐突だなぁ・・・一番クオリティ高く仕上がるのはクレイジーケンバンドだろうね。たぶん。
U・B  >ああ。どっかで隠れてやってそうだな。それ。なら、女性ヴォーカルだったら?
空虹桜>椎名林檎はちょっとアッチ系に行っちゃったのと結婚しちゃったから・・・なんかちょっと穴っぽいと
       こで、EGO-WRAPPIN'なんてどう?
U・B  >穴っぽいていうか、ねぇだろ。それ。にしても、この曲来年で10年なんだな・・・(※14


※1 そもそも原曲2ヴァージョンだし。ちなみに浜崎あゆみを筆頭にavexがアレンジ違いを出しまくってたけど、これとそれとは比較にすら値しない。音楽的位置づけや意味が違いすぎます。
※2 dis、つまり否定されたからそれに反論する、答えるってことで、アンサーソング。HipHopに限らず結構多いんです。アンサーソングって。
※3 名曲「5th WHEEL 2 the COACH」の歌詞に登場。それにしても、5th WHEEL 2 the COACHの回は嘘が多いな・・・っていうか、だから見直したくないんだよ。過去のクロスフェーダって・・・
※4 テクノ系のアレやコレのイヴェントだしょう。きっと。
※5 恐るべき事実を今さらながらに公表すると、実はほとんど資料見ずにここの注釈は書かれていた(爆)いや、オフィシャルとかでチェックしてはいたけど、最後の方になると手抜きしまくりでした。そんなわけで、今回は空虹がSDPの「YO!クロニクルダンディ」片手に注釈チェックしてるので内容はかなり正確ではなかろうかと。
※6 コーネリアスのリミックスアルバム「96/69」にスチャダラパーはリミックス/ラップを手がけた「1969」を収めている。コーネリアス:小山田圭吾(笑)この頃のコーネリアスと言えば波音しか思いつかない
※7 小沢と小山田のエトセトラに関しては余所をあたっておくれ。サイクル・ヒッツの時に書いたはずだからそっち参照。
※8 ついでにいっとくと夏目房乃助も漫画家だぞ。って、ホントにそんなことも知らないんですか?空虹桜に言わせれば、「ウルトラQ」が白黒だったことも今の子たちは知らないみたいんですけど、そもそも「ウルトラQ」知ってますか?
※9 なんかいろいろ徘徊してたらここにたどり着いた。gooなのと更新頻度がちょっとアレげだけどなかなかオモロなのです。たとえば、EAST END × YURI項からのリンク先にKICK THE CAN CREWがあったり(笑)
※10 次に出てくるのが1998年収録なんで、最低でも3年は間があいている。
※11 そんなこと言われたってにわかるはずがない(笑)しかも、どこでのパフォーマンスかもわからない。偶然ネットで見つけた比較的グレイゾーンな代物。ちなみに、宇多田の1stライヴ音源化熱望。(Wikipediaによると椎名林檎は絡んでない模様 2009/3/28追記))
※12 推して知るべし(苦笑)
※13 ここ空虹がこの一曲を力一杯語ってますんで、暇な人は参照のこと。
※14 空虹桜63行(!!)U・B42行で、二人あわせて105行!!!!ぢつはこっそり、ここに出てきた曲だけのCD-Rを自分用に作成してみた。曲順無茶苦茶なっちゃったけど(滅)まぁ、音質劣化してるし私的複製でOKでしょう(笑)CD-EXTRAにsmooth rapのPVまでつけたんでとても気持ちの良い一枚。なお、空虹はここ読むまでがそんなもん作ったことを知りません(笑)あと、ここに出てこなかった「今夜はブギーバック」をご存じの方はご一報ください。(「今夜はブギーバック disco to go Live(→小沢健二「ラブリー」のカップリング)」と「今夜はブギー・バック(meanwhile back at the party)(→nice voalのカップリング)」の情報をЮ氏よりいただきました。多謝多謝。 2005/8/8追記)(さらにЮ氏より「DO THE HOUSE BACK(→ECDによるアンサソング)」の情報をいただきました。激しく多謝。 2005/9/26追記) (さらに知ってる範囲では電気グルーヴ×スチャダラパーがサマソニのプレイヴェントで、嵐の櫻井翔がライヴで、アナログフィッシュがイヴェントライヴで、SDPプロデュースで竹中直人とワタナベイビーがCDまで出し、KREVAが中途半端なカヴァをし、ARABAKIロックフェスにてハナレグミfeat.SDPで唄ってました。 2007/5/13追記) (strike部分については「今夜はブギーバック談義2」を公開しましたのでそちらでどうぞ 2008/02/10追記)

空虹桜HP アノマロカリス > U・Bと空虹桜のクロスフェーダ > スチャダラパー > 第140回 今夜はブギーバック談義
空虹桜HP アノマロカリス > U・Bと空虹桜のクロスフェーダ > 小沢健二 > 第140回 今夜はブギーバック談義
雑感・レヴュ集 メタセコイア > 音楽 > etc... > 第140回 今夜はブギーバック談義
空虹桜HP アノマロカリスBANNER
(C) Copyright Unaru Bacteria & SORANIJI Sakura,2003
プライヴァシィポリシ
e-mail bacteria@gennari.net